法廷証言の86%が事実を肯定


“拉致監禁”の連鎖(214)パート9
「青春を返せ裁判」法廷証言から(14)

500代理人 これやっぱり監禁ということですよね。

豊島 そうですね。

(平成11年11月9日、被告側代理人の反対尋問で原告の豊島弘子さん=仮名、30=)

代理人 自由でなかったんですか。

大野 はい。

代理人 軟禁状態ですか。

大野 いいえ、監禁状態です。

(平成12年4月25日、同反対尋問で原告の大野由美さん=仮名、29=)

 札幌地裁で行われた「青春を返せ裁判」の法廷証言では、原告21人のうち8人が監禁された事実を認めた。その他8人が「監禁」という表現はしていないが、部屋には鍵がかけられ、自由に出入りできなかったと事実上、監禁を認めた証言。2人は、鍵は掛けられていなかったが、常に誰かが見張っていて逃げ出せる状態ではなかった、と証言し、いわゆる軟禁状態であったことを示した。残り3人は出入りの制限はなかった、監禁ではなかったとした。

 原告21人のうち16人(86%)が、何らかの意味で拘束され、その状態の中で、脱会屋や牧師が訪れ、結果的に脱会を決意するに至ったということである。

 拉致監禁虚構派が「拉致監禁ではなく保護説得」だとする主張とは懸け離れた実態がここにある。

 当時、こうした事実に対してどういった反応があったか知ることができないが、2005年発行『自立への苦闘』の中で、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」メンバーの1人、山口広弁護士が「脱会・救出に関わる訴訟の決着」と題して次のように述べている。

 「任意の話し合いしか認められないとすれば、そこに対話は成立せず、これは、座して家庭崩壊や我が子の人生の破壊を見ていなさいと言うに等しいのではないかという家族の悲嘆の声が聞こえてきます。ある程度の有形力の行使も場合によっては認められることもあり得るのではないかとも考えられるのです。しかし、一方的な有形力の行使によって、信者本人の意思を著しく無視して、その自由を拘束し続けることは、決して許されることではありません」。

 法を守るべき弁護士としての苦しい弁明は、「青春を返せ裁判」などを受けた山口弁護士の独自の見解と見ていいだろう。

 だが、「有形力の行使」についてのこういった玉虫色の表現、見解は、親子の自由な話し合いによってこそ展望を開くことができる信仰問題について、それ以後の解決の道をふさぎ、さらに脱会屋などの付け入る隙を与えた、大きな要因ではなかろうか。

 「青春を返せ裁判」が開始される前の昭和60年までに、精神病院を舞台とした強制棄教事件、その後、脱会屋などが手配する市中のマンションなどでの拉致監禁が頻発した。最近、その数は減ったものの、中には壮年を狙った強制棄教という新しい事態も起きている。

 この40年間、今なお続く強制改宗を狙った拉致監禁問題をあいまいな形のままで終わらせてはならないのである。

パートⅨ完

(「宗教の自由」取材班=編集委員・堀本和博、同・片上晴彦、同・森田清策、社会部・岩城喜之)