韓国の棚上げに懸念、北朝鮮人権問題で米アナリスト


「最大限の圧力」が後退

 韓国政府が北朝鮮の人権問題を棚上げし、融和策を進める中、米国の保守系人権グループは、韓国政府の融和策に追随することで、核廃棄へ「最大限の圧力」をかけるとしたトランプ米大統領の政策に陰りが見え始めていると懸念を表明した。(ワシントン・タイムズ特約)

オリビア・エノス氏

オリビア・エノス氏

 ヘリテージ財団のアジア政策アナリスト、オリビア・エノス氏はアジア地域専門家らとの会合で、トランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長との6月の会談以後、強制収容所や政治犯などをめぐる北朝鮮の人権問題は「交渉のテーブルから滑り落ちて」しまい、北朝鮮が「交渉の条件を決めている」と指摘した。

 アナリストらは、核・ミサイル開発計画の資金源の一部は、強制労働や国外の北朝鮮人労働者に依存していると指摘、核廃棄のためには、これら人権問題にも取り組む必要があると訴えた。

 北朝鮮は、10万人以上の政治犯の強制労働から資金を獲得、ロシア、中国など十数カ国に送った数万人の「外国人労働者」から年間2億5000万㌦を手に入れているとみられている。

 また、政治犯やその家族を使って生物・化学兵器の実験を行っているとの人権グループからの報告もある。

 元米情報機関職員でブルッキングズ研究所の上級研究員ジュン・パク氏は「人権侵害と北朝鮮の大量破壊兵器開発は、現体制を下支えする2本の柱であり、両者は互いに強化し合っている」と人権問題の重要性を訴えた。

文在寅大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長

9月19日、平壌市内にある冷麺の有名店、玉流館で昼食を共にする韓国の文在寅大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(AFP時事)

 米国に拠点を持つ北朝鮮人権委員会のグレッグ・スカラテュー事務総長は、問題は、韓国の文在寅大統領が、人権問題は微妙であり、交渉の早い段階で扱うのは不適切と考えていることだと強調。「交渉を早く進めたいがため、人権が後回しになっている」と指摘した。

 スカラテュー氏はまた、韓国政府が、北朝鮮を刺激することを恐れて、国内の脱北者グループへの支援を減らしていることを明らかにした。

 韓国国会は今年に入って、脱北者グループへの予算の大幅削減で一致、米朝首脳会談から数週後に、韓国政府は、北朝鮮人権委員会支部への援助を停止した。

 韓国内には約3万1000人の脱北者がいるが、2017年5月の文大統領就任以降、韓国当局による監視が強まったという証言が出ているという。スカラテュー氏は「これは明らかに金正恩氏への融和策の一環」と非難した。

 また同氏は、脱北者や活動家グループが韓国から北朝鮮に情報を送る活動を韓国警察が取り締まっていることに強い懸念を表明した。

 韓国の活動家らは、北朝鮮国外の動画や情報を保存したUSBメモリーを、コメを入れたボトルに入れて海に流し、海流に乗せて北朝鮮の海岸に送る活動を行っている。ところが、韓国警察によって、内容をチェックされた上に、データを没収されるという事例が複数起きているという。

 一方、パク氏は、トランプ氏が昨年、国連演説で北朝鮮の核による挑発と人権問題を強く非難したが、今年9月の国連総会演説では人権への言及はなく、昨年の発言から大きく後退したことに失望を表明した。