米迎撃ミサイル、北の脅威への備えを万全に


 米国防総省は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を迎撃ミサイルで撃ち落とす初の実験に成功した。北朝鮮は米本土を攻撃できるICBM開発を急ピッチで進めている。今回の実験には北朝鮮を牽制(けんせい)する狙いがある。

 国防総省は「現実の脅威に対する抑止力の信頼性を示した」と成果を強調した。備えを万全にする必要がある。

 ICBM想定の実験成功

 実験では、西太平洋のマーシャル諸島の実験場からICBMに見立てた標的を発射。太平洋に配置した海上型のXバンドレーダーなどで捕捉、追跡し、米西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地にある地上発射型迎撃ミサイル(GBI)を使って撃ち落とした。

 米国は1999年以来、中距離弾道ミサイルなどを想定してGBIの実験を17回行い、9回成功。前回は2014年6月に実施して成功している。

 北朝鮮は今年だけで弾道ミサイルを9回発射している。米国防情報局(DIA)のスチュワート長官は「北朝鮮が現在の軌道を進めば、最終的に米本土の脅威となる核搭載ミサイル技術の取得に成功するだろう」と警告した。

 トランプ米政権は2018会計年度(17年10月~18年9月)の国防予算案で、ミサイル防衛局の予算として前年度比3億7900万㌦(約421億円)増額の79億㌦(約8800億円)を計上した。現在アラスカ州のフォート・グリーリー基地に32基とバンデンバーグ基地に4基配備されているGBIを、年内にアラスカ州に新たに8基配備し、合わせて44基に増やす計画を進めている。

 米国はミサイル防衛システムを強化するとともに北朝鮮への圧力を強めていく必要がある。西太平洋には現在、米空母「カール・ビンソン」「ロナルド・レーガン」が展開している。米海軍はさらに空母「ニミッツ」を西太平洋に投入して軍事力を誇示する構えだ。

 北朝鮮は弾道ミサイル発射を繰り返しているが、新たな核実験やICBMの試射には踏み切っていない。対話から軍事行動まで「すべての選択肢がテーブルの上にある」とするトランプ政権の姿勢が、一定の抑止効果を発揮していると言えよう。

 北朝鮮のミサイル開発の進展は、日本にとっても深刻な脅威である。北朝鮮外務省は、日本が先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の場で、北朝鮮に対する圧力強化に言及したと非難した上で「これまでは在日米軍基地をわれわれの軍の照準に合わせていたが、日本が米国に追従して敵対的に出るならば、われわれの標的は変わるしかないだろう」と警告。米軍基地以外も攻撃対象とすると威嚇した。

 日本も対処能力高めよ

 日本も北朝鮮のミサイルへの対処能力を高めなければならない。現状のミサイル防衛は、イージス艦搭載ミサイル「SM3」が大気圏外で、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が地上十数㌔で迎撃する二段構えだが、政府はさらに陸上配備型イージスシステム「イージス・アショア」を導入する方向だ。日米両国で北朝鮮に対する抑止力を向上させねばならない。