次期米政権人事、国際社会への関与強めよ


 トランプ次期米大統領は、国務長官に国際石油資本(メジャー)の一つ、エクソンモービルのレックス・ティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)を起用することを明らかにした。

 トランプ氏は「ティラーソン氏の経歴はアメリカンドリームを体現したもの」と称賛。その上で「彼は地域に安定をもたらし、米国の核心的な安全保障上の利益に重点的に取り組む」と強調した。

 国務長官に石油大手会長

 次期政権人事が行われる中、政権の顔とも言える国務長官選びが難航していた。すでに国防長官にジェームズ・マティス元中央軍司令官、国家安全保障担当大統領補佐官にはマイケル・フリン元国防情報局長官と、共に軍事経験が豊富な元将官の起用が決まっている。

 トランプ氏はロシアとの関係改善を主張している。ティラーソン氏は石油ビジネスを通じた国際感覚があり、プーチン露大統領と親しい。トランプ氏はティラーソン氏の企業経営者としての経験を外交に生かすことを期待しているとみられる。

 ティラーソン氏は、オバマ米政権がウクライナ問題を受けてロシアに科した経済制裁に反対しているなど懸念材料もある。しかし保守的な思想を持ち、愛国心も強い。

 ゲーツ元国防長官ら共和党の重鎮がティラーソン氏を強く推したことも見逃せない。ただティラーソン氏は、オバマ政権のクリントン前国務長官やケリー国務長官のように政治経験はない。外交能力は未知数だ。このため、外交実務経験が豊富なジョン・ボルトン元国連大使を副長官に起用し、ティラーソン氏を補佐する方向だという。

 一方、マティス氏は軍歴44年の元海兵隊大将で、初の海兵隊出身の国防長官となる。アフガニスタン戦争やイラク戦争で部隊を指揮するなど中東情勢に精通しており、トランプ氏が優先課題とする過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦をはじめ、北大西洋条約機構(NATO)との共同作戦などに適任と言える。

 マティス氏を国防長官に推したのはフリン氏とみられる。フリン氏も情報将校としてアフガンとイラクの戦争に従軍した。マティス、フリン両氏は、オバマ大統領や政権幹部との確執などから、退任を余儀なくされた点で共通している。両氏の重用は、トランプ氏がイデオロギーを排した現実的、戦略的見地からの助言に重きを置いている表れと読み取ることもできる。

 オバマ政権では国防長官が3回代わった。世界の軍事情勢に対する国防総省とホワイトハウスの見解の相違が、事あるごとに露呈した。オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と明言したが、トランプ次期政権には国際社会への関与を強化することが期待される。

 同盟国との関係重視を

 トランプ次期政権のアジア太平洋政策に関しては目下、未知数の面も多い。中国の強引な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発は、周辺諸国だけでなく米国の国益も損ないかねない。歯止めをかける上で、トランプ氏は日本や韓国など同盟国との関係を重視すべきだ。