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「イスラム国」制圧、再興許さぬ軍事的圧力維持を


 米軍の支援を受けるシリアのクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は、過激派組織「イスラム国」(IS)が支配していたシリア東部バグズを制圧したと宣言した。

 バグズはシリアに残されたISの最後の拠点とされ、支配領域を持つ疑似国家としてのISは崩壊した。

 残党はいまだ数万人とも

 ISは、イスラム教の教えを独自に解釈し、武力で社会変革を目指す過激派組織だ。最高指導者のアブバクル・バグダディ容疑者は2014年6月、自らを「カリフ」(預言者ムハンマドの代理人)と名乗り、国家樹立を宣言して、一時はシリアとイラクにまたがる広大な地域を支配した。

 また、異教徒の女性を性奴隷にしたり、遺跡を破壊したりしたほか、身代金目的で誘拐した人質を残虐な方法で殺害するなどの蛮行を繰り返してきた。さらに、ISがインターネットなどで拡散した過激思想に世界中で多くの若者が共鳴し、ISに参加する者や、自国でテロを実行する者らが相次ぐなど、さまざまな問題を引き起こした。

 しかし14年8月、当時のオバマ米政権が開始した軍事作戦でISは徐々に支配地域を失い、シリアでは17年に「首都」とされた北部ラッカを失った。SDFは今年に入り、シリア東部で対IS最終掃討作戦を開始。今回のバグズ制圧でISのカリフ国家は消滅した。

 とはいえ、イラク、シリア両国に散らばったIS残党はいまだ数万人に上るとされる。イラクでは、ISの国内最大拠点だった北部モスル周辺などで残党の犯行とみられるテロが相次いでいる。バグダディ容疑者の所在が分からないままであることも懸念材料だ。

 シリア情勢に関しては、トランプ米大統領が昨年12月、米軍部隊の全面撤収を表明し、当時のマティス国防長官が抗議の辞任に踏み切る事態に発展した。米軍が撤収すれば「力の空白」に乗じてISが勢力を盛り返す可能性もある。オバマ政権は11年末にイラクから米軍を完全に撤収させたが、このことがISの台頭につながった。

 米国防総省がまとめた報告書によれば、中東地域でIS掃討戦などを展開する米中央軍は「軍事的圧力が維持されなければ、ISは6~12カ月で勢力を盛り返し、再び限定的な領土を確保する恐れがある」と指摘している。こうした事態を許してはならない。

 トランプ氏はマティス氏の辞任後、シリア国内に数百人規模の米軍を残留させるとともに、撤収部隊も当面はイラクに移し、シリアでの動向も警戒していくという方向に軌道修正した。今回もIS残党の再興阻止のために「警戒を続ける」と表明。米軍の早期撤収には言及しなかった。地域の安定には米軍の存在が欠かせない。

 対テロ戦への協力強化を

 ISは日本人もテロの標的にすると表明し、日本人の人質を殺害したこともある。

 20年東京五輪・パラリンピックを控える中、日本もテロ関連情報の収集体制を拡充するなどして国際的な対テロ戦への協力を強化する必要がある。