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シリア内戦、流血と人道危機の拡大抑えよ


 シリア内戦でアサド政権が反体制派への攻撃を強めている。首都ダマスカス郊外の反体制派支配地域、東グータ地区ではアサド政権軍の空爆が連日続き、18日以降の犠牲者は500人を超えた。このうち子供は100人以上に上る。

 安保理が停戦決議採択

 アサド政権の攻撃強化の背景には、シリアで過激派組織「イスラム国」(IS)が駆逐された後、関係国・勢力の衝突が泥沼化していることがある。アサド政権は昨秋ごろから反体制派攻撃に兵力を集中できるようになったとされ、東グータでは今月初めにも200人以上が死亡している。化学兵器の一種である塩素ガスが攻撃に使われた疑いも浮上するなど到底看過できな事態だ。

 2011年3月に始まったシリア内戦では、既に30万人以上が死亡した。国内外の避難民は1000万人以上に達する。

 内戦を長引かせているのは、シリアをめぐる米露の対立だ。シリア西部タルトゥスに海軍基地を置くロシアは、イランと共にアサド政権を支援する。これに対し米国は、アサド政権退陣がシリア問題解決の前提としている。

 国連安全保障理事会は、シリア全土で人道支援や重傷者の退避を目的とした30日間の停戦を求める決議案を全会一致で採択した。決議は、人道支援の物資運搬や活動、重傷者らの退避を可能とするため、「遅滞なく」戦闘を停止するよう要求。東グータなどの地域の包囲を直ちに解くよう求めた。

 しかし、採択後にもアサド政権軍が東グータへの空爆を行うなど実効性には疑問が残る。決議はテロ組織に対する軍事作戦は停戦対象から除外しており、アサド政権がこの規定を「抜け道」に攻撃を続けることに警戒を要する。

 クルド人勢力をめぐって米国とトルコとの関係が悪化していることも懸念材料だ。米国はIS掃討戦で、クルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」を主力とする「シリア民主軍(SDF)」を軍事支援してきた。だが、トルコはYPGを自国内の反政府武装組織「クルド労働者党(PKK)」と密接な関係を持つ「テロ組織」と位置付けており、攻撃を加えている。

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、シリア和平の仲介ではNATOと緊張関係にあるロシアやイランと連携している。今年1月には内戦終結に向け、この3カ国やシリア各勢力による会議がロシア南部ソチで開かれたが、シリアの主要な反体制派は不参加を表明した。

 ロシアがこのような会議を開催するのは、中東での影響力拡大を内外にアピールする狙いがある。だが、アサド政権に肩入れするロシアに対するシリア反体制派の敵意は根強い。米国抜きでは和平の実現は難しいだろう。米露をはじめとする国際社会は一致して流血と人道危機の拡大を抑えなければならない。

 求められる宗派対立克服

 シリア内戦の背景には深刻な宗派対立があることも見逃せない。和平プロセスの確立と共に宗派対立克服への息の長い取り組みも求められる。