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シリア直接対話、停戦と人道支援を実現せよ


 シリア内戦終結に向けたアサド政権と反体制派「国民連合」による初めての直接対話が、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で行われている。何よりも停戦と人道支援を早期に実現してほしい。3年に及ぶ内戦では十数万人の死者が出たほか、1000万人近くが難民や国内避難民となっている。このまま放置することはできない。

内戦は代理戦争の様相

 直接対話では中部ホムス旧市街での人道目的の部分停戦に関して協議され、シリアのメクダド外務副大臣は支援物資搬送車両や脱出する女性・子供に攻撃を加えない意向を示した。反体制派もホムスに入る人道支援車両を攻撃しないことに同意したという。住民への速やかな支援を求めるとともに、停戦地域や支援の拡大を期待したい。

 しかし、両者の隔たりは大きい。和平実現を難しくしてきた第一の原因は、内戦が大国の代理戦争の様相を呈していることだ。米欧は反体制派、ロシアと中国はアサド政権を支持している。大国の足並みがそろっていないため、停戦への有効な手だてを講じられない状況だ。

 アサド大統領の処遇をめぐっては、直接対話に先立って開かれた国際会議でケリー米国務長官が退陣の必要性を主張する一方、ロシアのラブロフ外相が退陣論を牽制(けんせい)するなど、これまでの対立の構図が蒸し返された。

 第二は、宗派対立が絡んでいることだ。アサド政権はイスラム教のシーア派に近いアラウィ派主導であるため、シーア派の大国イランが支援している。一方、スンニ派の大国サウジアラビアなどアラブ湾岸諸国は自派の反体制勢力に武器支援を行っている。

 第三は最近の戦況だ。政権側はこのところ内戦で優位にあるとみられており、反体制派側に歩み寄る必要に迫られていない。しかも反体制派側は、昨年12月に主要武装組織「イスラム戦線」、今月には最大派閥「国民評議会」が国民連合から離脱したため、組織力が弱まっている。国際会議はこのため、政権側と反体制派との間の深い溝を露呈するだけで終わった。

 注目されるのは、反体制派を後押しする米欧の間でアサド大統領の処遇問題の棚上げもやむを得ないという現実的な意見が出ていることだ。確かにシリア国民の苦しみを考えた場合、人道支援を最優先させるのは当然だろう。

 まずは関係各国そして国内各派が停戦で合意し、これ以上人道危機を深刻化させないことが肝要だ。特に、イランやサウジなどの近隣諸国は宗派を超えて協力する必要がある。

 国際会議では、内戦に乗じて国際テロ組織アルカイダ系武装組織が勢力を伸ばしていることへの懸念が相次いで表明された。武装組織はイラクやレバノンでも活動を活発化させている。シリアがテロリストの基地となるのを阻止するための方策も欠かせない。

日本は一層の関与を

 国際会議には日本から岸田文雄外相が出席し、1億2000万㌦(約125億円)の人道支援を行うと表明した。シリア和平実現に向け、日本にも一層の関与が求められる。

(1月28日付社説)