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米国務長官訪朝、首脳会談ありきでは駄目だ


 ポンペオ米国務長官が北朝鮮を訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長と会談した。両氏は2回目の米朝首脳会談を早期に開催することで一致した。一方、北朝鮮が応じたとされる非核化措置は必ずしも歓迎できるものではない。首脳会談ありきでことを進め、肝心の非核化の中身が曖昧な状況が続いているのは北朝鮮の思惑通りではないのか。憂慮すべき展開だ。

 非核化の焦点ぼかしか

 ポンペオ氏の訪朝は、先月、平壌で開催された南北首脳会談で正恩氏がトランプ米大統領との再会談を希望し、トランプ氏もそれを強く支持したことを受けて実現したものだ。6月の米朝首脳会談以降、北朝鮮の非核化をめぐる双方の協議は進展していなかった。

 米国は北朝鮮の非核化が先行されるべきとの立場だが、北朝鮮は自国の体制保証につながる朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言を優先させる考えとみられている。北朝鮮としては南北首脳会談で北西部の東倉里にあるミサイル発射試験場や発射台、さらに米国による「相応の措置」を条件にした寧辺核施設の「永久的廃棄」を表明し、これを終戦宣言への誘い水にしたかったようだ。

 ところがポンペオ氏は、正恩氏が寧辺核施設ではなく北東部の豊渓里にある核実験場と東倉里ミサイル試験場の廃棄を確認する査察団受け入れで同意したと明らかにした。

 過去6回の核実験強行で既に一定のデータを蓄積した北朝鮮にとって、核実験そのものの意義は低下しているとの見方が多い。実験場は地盤沈下が進み、存在価値も低いだろう。

 ミサイル試験場にしても先制攻撃を防ぐ必要性から今や弾道ミサイル発射は移動式発射台を使うのが主流であるのは明らかで、試験場廃棄だけで非核化が進展したとは言えまい。むしろ焦点ぼかしの狙いがあるのではないかと疑われる。

 会談後、北朝鮮メディアは核実験場とミサイル試験場への査察団受け入れには一切言及しなかった。本気で査察に応じるのか疑問視する声も出ている。

 既存の核・ミサイル関連施設に関してでさえ北朝鮮は非核化措置を小出しにし、前提条件を付けてくる。これに加え核弾頭や弾道ミサイルを隠蔽(いんぺい)している場合、完全非核化への道筋は描けなくなる恐れがある。こうした状況のまま米朝首脳が再会談しても非核化進展にどこまでメドを付けられるだろうか。

 来月に迫った米中間選挙に向け外交実績をアピールしたいトランプ氏は、非核化での「進展」を強調するため北朝鮮に譲歩する恐れがある。正恩氏は先月、トランプ氏の1期目任期が終わるまでの非核化実現に意欲を示したというが、トランプ氏は非核化には期限を設けないという発言であっさりハードルを下げてしまった。米朝対話の先行きが危ぶまれるゆえんだ。

翻弄されず拉致解決を

 非核化と同時に北朝鮮による日本人拉致問題の解決が急がれる。ポンペオ氏は正恩氏に同問題を提起したというが、解決には難しい水面下での交渉がなお必要だ。北朝鮮に翻弄(ほんろう)されず、かつ結果につなげるしかない。