膠着局面の朝米非核化交渉


韓国紙セゲイルボ

韓国は“終戦宣言”論理の開発を

 非核化をめぐる朝米交渉が停滞しているが、簡単には変化しないだろうというのが一般的な観測だ。朝米両国が交渉を破局させないのは、トランプ大統領と金正恩国務委員長との信頼が維持されているからだが、むしろ、われわれが憂慮することは、秋の米中間選挙前に北朝鮮がやむを得ず核兵器の幾つかを申告したり、大陸間弾道ミサイル廃棄を宣言したりして適当に妥協することだ。

 トランプ大統領も目の前の利益のために北朝鮮のジェスチャーを自身の成果として片付ける可能性がある。この場合、北朝鮮の非核化過程は限りなく引き伸ばせるし、非核化の目標もうやむやになるだろう。

 そのような状況を防ぐためには、北朝鮮が要求する終戦宣言と米国が願う非核化プロセス(申告)を交換できる状況がつくられなければならない。すなわち、北朝鮮と米国が同意できる“終戦宣言”論理をつくり出さなければならない。これが韓国の課題だ。

 米国は北朝鮮が願う終戦宣言を行う場合、非核化を推進する戦略的なカードを失(な)くすだけでなく、結局、在韓米軍の撤退につながる最悪の状況を憂慮している。

 米国の多くの専門家は北朝鮮問題も中国と関連しているとみている。彼らは朝米が終戦宣言をすることになれば、在韓米軍の撤退問題だけでなく、在日米軍撤退にもつながるだろうと予想する。すなわち東北アジアでの米国の影響力を弱めようとする中国の意図が終戦宣言にも仕組まれているとみるのだ。

 北朝鮮は核実験とミサイル発射を中断し、豊渓里核実験場の廃棄などを“自発的な信頼造成措置”だと主張して、次は米国が段階的に制裁を緩和する“善意”を示せと要求する。その最たるものが米国の終戦宣言だ。

 このような膠着(こうちゃく)局面で韓国の促進者としての役割はより一層求められる。1971年の米中和解を参考にすることができよう、中国の周恩来首相(当時)は米中和解のためには中国に脅威となる在日米軍の撤退が必要不可欠だと要求した。これに対して、米国のキッシンジャー国務長官(当時)は「在日米軍があるからこそ、日本の再武装を防ぐことができる」という論理で説得して米軍を駐留させたまま、米中和解を実現することができた。

 今こそ米国の憂慮を払拭(ふっしょく)し、中国と北朝鮮の戦略的な意図も防ぎつつ非核化の推進を説得する論理が必要だ。金日成主席も東北アジアにおける米軍の役割を認めたことを考慮するなら、韓国政府が北朝鮮と中国に対して、東北アジアにおける米軍の肯定的な役割を説得できてこそ、終戦宣言も具体化させられる。

 韓国政府は北朝鮮の代弁者という誤解を払拭しながら、米国と国際社会を説得できる論理の開発により一層力を傾けなければならないだろう。

(陳昌洙(チンチャンス)世宗研究所首席研究委員、8月10日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。