朝鮮半島完全非核化で合意―南北首脳が「板門店宣言」


北の措置、確認できず 年内に終戦宣言目指す

27日、板門店平和の家で「板門店宣言」に署名した文在寅韓国大統領(右)と金正恩朝鮮労働党委員長

27日、板門店平和の家で「板門店宣言」に署名した文在寅韓国大統領(右)と金正恩朝鮮労働党委員長

 【高陽(韓国北西部)上田勇実】
韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は27日、南北軍事境界線にある板門店の韓国側施設「平和の家」で第3回南北首脳会談を行い、「朝鮮半島の平和繁栄、統一のための板門店宣言」に署名した。両首脳は宣言で焦点だった北朝鮮の非核化について「完全非核化」を約束しながらも、北朝鮮の措置が確認できない内容にとどまった。一方、年内に朝鮮半島の終戦宣言を目指し、休戦協定を平和協定に転換させるため韓国、北朝鮮、米国の3者かこれに中国を加えた4者による会談を推進することで合意した。

 宣言は北朝鮮非核化問題を平和体制転換の項目の中で最後に言及。「完全な非核化」に触れながらも「核のない朝鮮半島」として北朝鮮に逃げ口実を与えた印象だ。今月20日に北朝鮮が発表した核・ミサイル実験中止と核実験場の廃棄についても「極めて意義があり重大な措置」と評価し、国際社会が求める完全かつ検証可能で不可逆的な非核化には一切言及しなかった。

 休戦協定の平和協定への転換は北朝鮮が非核化の見返りとして要求するとみられてきた主要懸案事項。6月初めまでに開催見通しの米朝首脳会談に向け、南北が歩調を合わせ米国に賛同を促す形となった。

 ただ、平和協定転換は北朝鮮が在韓米軍を撤退させた後に韓国を自国支配下に置くいわゆる「赤化統一路線」を念頭に主張し続けてきたもので、今後、物議を醸しそうだ。

 宣言には、核・ミサイル開発で国際社会の北朝鮮に対する制裁が続き、韓国政府が今回の会談では議題に上がらないと明言していた南北経済協力でも踏み込んだ内容が盛り込まれた。

 現在は断絶している東海岸沿いと西海岸沿いの南北をつなぐ道路・鉄道を連結、補修することで合意するなど、宣言は2007年第2回南北首脳会談で合意後、保守政権への交代で履行されないままの経済協力事業を「積極的に進める」とした。

 このほか共同宣言では南北間の軍事的緊張緩和の一環として来月1日から軍事境界線付近での拡声器による宣伝放送とビラ散布を中止し、人道問題への取り組みとして今年8月15日に離散家族再会事業を行うことが明記された。

 また双方の当局者が常駐する南北共同連絡所を北朝鮮の開城に設置することにした。

 双方は文大統領が今年秋に平壌を訪問し、金委員長と首脳会談を行うことでも合意。今後、首脳会談の定例化につなげる考えだ。

 今回の首脳会談に先立ち安倍晋三首相は文大統領と電話し、会談で日本人拉致問題を取り上げるよう要請したが、文大統領が言及したか今のところ不明だ。