北ミサイル、脅しでは未来を描けない


 北朝鮮が北西部・亀城市の方峴付近から日本海に向け弾道ミサイル1発を発射し、北朝鮮メディアは「特別重大報道」で大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に「成功した」と発表した。実際にICBMかどうかは不明だが、いずれにせよ許し難い暴挙だ。

「大陸間弾道弾」と発表

 ミサイルは約40分間飛行し、日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。EEZ内の落下は昨年8月以降5回目となる。航空機や船舶の被害は確認されていないが、危険極まりない挑発行為であり、断じて容認できない。

 ミサイルの高度は2800㌔に達し、約930㌔飛行した。通常より高い高度で打ち上げるロフテッド軌道とみられ、5月に発射したミサイルの高度2000㌔を上回っている。

 北朝鮮は昨年1月の核実験と2月の長距離弾道ミサイル発射を伝えた際にも特別重大報道とう表現を使った。今回のミサイルがICBMだとすれば、米本土を射程に収めることになる。トランプ米政権は、北朝鮮のICBM発射を軍事的対応も取り得る「レッドライン(越えてはならない一線)」としてきた。

 しかし、日本政府では弾頭の大気圏への再突入など高度な技術が確立されていないとして否定的な見方が強い。米国も中距離弾道ミサイルとしている。もっとも、たとえICBMでなかったとしても、北朝鮮のミサイル技術が急速に進展していることは確かだ。

 北朝鮮がICBM開発を急ぐのは、米国に敵視政策を撤回させ、体制を保証させることを狙っているためだ。金正恩朝鮮労働党委員長は、外国に対しては核とミサイルで脅し、国内では幹部の処刑などの恐怖政治を行っている。

 しかし、こうしたやり方では決して未来を描くことはできない。国際社会は、正恩氏に核・ミサイル開発を必ず断念させ、人権侵害をやめさせなければならない。

 これまで北朝鮮の核実験などに対し、国連安全保障理事会が何度も制裁決議を採択するなど、国際社会は圧力を強めてきたが、効果は上がっていない。鍵を握るのは中国だ。北朝鮮の貿易取引の約9割を占める中国の協力がなければ、この問題の解決は難しい。

 中国はこれまで北朝鮮への圧力強化には消極的だった。北朝鮮の体制が崩壊すれば、中国は米軍と直接対峙(たいじ)することになるからだ。

 だが中国が影響力を行使しなければ、北朝鮮は核・ミサイルを手放そうとはしないだろう。中国は安保理常任理事国でもあり、北朝鮮に甘い態度を取り続けることは責任回避だと言われても仕方がない。

中国は大国の責任果たせ

 トランプ政権は先月末、中国の丹東銀行などを制裁対象に加えると発表した。丹東銀行は北朝鮮の大量破壊兵器開発に関わる企業への資金調達や北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したという。

 中国は北朝鮮の核・ミサイル開発を止めるために圧力を強化し、大国としての責任を果たすべきだ。