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韓国大統領選、対北姿勢が問われている


 5月9日投開票の韓国大統領選の選挙運動が正式に開始された。最大野党「共に民主党」の文在寅前代表と野党第2党「国民の党」の安哲秀元共同代表が接戦を繰り広げている。

 文氏を猛追する安氏

 今回の大統領選は、朴槿恵前大統領が罷免で失職したことに伴うものである。米国の原子力空母が韓半島近海に向け派遣される中、北朝鮮が失敗に終わったとはいえ、弾道ミサイルを発射するなど厳しい情勢下だ。北朝鮮の脅威に対処し得る強固な体制をいかに構築するかが焦点となる。

 選挙情勢は当初、文氏が優勢とみられていたが、現在は安氏が猛追している。「共に民主党」の公認候補の座を文氏と争った忠清南道知事の支持層が安氏に流れた結果とみられる。

 その背景として、北朝鮮問題に関する国民の危機感の高まりが注目される。文氏は北朝鮮に融和的で対話を重視している。これに保守層が反発し、安氏支持に回ったとみてよい。安氏は北朝鮮との対話を模索するとしながらも、共産主義者は油断がならないとして対北制裁重視の姿勢を取る。さらに、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を進める方針を鮮明にした。

 THAAD配備の見直しを示唆してきた文氏は、最近では方針転換し、北朝鮮の出方次第では配備容認に転じるとの考えを表明した。甘い対北姿勢は票にならないとして、中道や保守層を取り込むことが狙いのようだ。

 朴前大統領は収賄などの容疑で逮捕された。韓国で大統領経験者が逮捕されたのは、朴容疑者で3人目だ。韓国には身内を大切にする風習があるため、大統領自身だけでなく、その身内の不正が追及された例が多い。また、同郷、同窓、親族などを特別扱いする縁故主義が今なお残っている。大統領に権力が集中しているため、蜜に群がるように親類や縁者が周囲に集まる。

 安氏はこれらの弊害に関して大統領権限を縮小する必要性を訴え、憲法改正に意欲を示している。誰が新大統領に当選しても、思い切った制度の改革を迫られているのが韓国の現状だ。

 われわれが最も憂慮するのは今後の日韓関係だ。主要候補の全てがいわゆる従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意を修正すると主張している。日韓合意は国同士の約束であり、政権が代わっても反故にできないはずである。誠実に履行しなければ、韓国の国際的な信用を損なうことになる。

 選挙に当たって国民のナショナリズムに訴えるのは、最も簡便な支持獲得の方法であろう。だが国際的な約束事を無視するのは、候補者のみならず国の品位を傷付ける。

 安定に資する政策討議を

 今回の大統領選は大統領弾劾を受けて行われる初の突発選挙だ。このため当選すれば、就任式も省略して執務を開始しなければならない。見苦しい中傷合戦の中、政策中心の論戦が見失われるという旧態依然とした選挙戦が展開されているのは残念だ。韓国と地域の平和と安定に資する政策が何かを真剣に討議する必要がある。