対北制裁決議、圧力高め核開発を阻止せよ


 国連安全保障理事会は9月に5回目の核実験を行った北朝鮮を強く非難し、制裁を強化するための決議を全会一致で採択した。核・ミサイル開発への資金流用を減らすため、最大の外貨収入源である石炭輸出に厳しい上限を課している。国際社会は北朝鮮への圧力を高め、核開発を阻止すべきだ。

 石炭輸出に厳しい上限

 北朝鮮産の石炭の輸出総量は来年1月から、年間約4億㌦(約450億円)もしくは750万㌧に制限される。2015年に比べ62%減となる計算だ。石炭輸出は北朝鮮の外貨収入源のほぼ3分の1を占めており、決議が厳格に履行されれば大きな打撃となろう。

 北朝鮮は今年に入って2度の核実験を強行したほか、20発以上の弾道ミサイルを発射している。いずれも安保理決議に違反しており、国際社会が厳しい姿勢で臨むのは当然だ。

 石炭輸出は3月の制裁決議で禁止されたものの、国民の生計目的であれば許される例外規定がある。これが制裁の「抜け穴」となった。

 北朝鮮の石炭は全て中国向けに輸出されている。制裁開始直後こそ中国への輸出は減ったが、徐々に増加。8月には輸出額・量とも前年同月比プラスに転じた。今回の制裁はこうした抜け穴をふさぐためのものだが、実効性を確保できるかどうかは中国にかかっていると言える。

 もっとも中国には、厳しい制裁で北朝鮮が混乱すれば中国側に難民が押し寄せかねないとの懸念がある。核実験から今回の決議採択まで2カ月半かかったのも、中国が慎重姿勢を崩さなかったためだ。

 中国は石炭輸出の上限設定に同意する一方、米国が主張した原油供給の停止は拒否した。中朝国境では、北朝鮮の天然資源の密輸が常態化していると言われ、中国が決議を厳格に履行するかは不透明だ。

 中国が今回の制裁を支持した背景に、来年1月に発足するトランプ次期米政権の影響があるとも指摘されている。トランプ政権が北朝鮮問題などで中国に圧力を強めることが予想されるため、米国との協力姿勢を示すことでトランプ政権を牽制(けんせい)する狙いとの見方もある。

 とはいえ、中国は安保理常任理事国であり、世界2位の経済大国だ。どのような思惑があるにせよ、決議を履行する責任がある。自国中心の振る舞いは決して許されない。

 北朝鮮の核・ミサイルは、日本や韓国などの周辺諸国にとって大きな脅威となっている。中国も北朝鮮の核保有は望まないはずだ。今回の決議を主導した日米両国は、中国が北朝鮮への圧力を高めるよう働き掛ける必要がある。

 拉致解決につなげよ

 一方、政府は北朝鮮に対し、人や資金の移動を規制する新たな独自制裁を決定した。中国の企業・個人を含めるなど資産凍結対象を拡大したほか、渡航規制の対象も広げ、北朝鮮に寄港した船舶の入港禁止措置を日本籍船舶にも適用する。

 日本は北朝鮮との間に、核・ミサイルのほか拉致問題も抱える。制裁強化を拉致解決につなげなければならない。