対ロシアに見る国際関係の修辞と実利


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6日、仏ウィストレアムでのノルマンディー上陸作戦70年の式典で、プーチン・ロシア大統領(左)を導くオランド仏大統領(AFP=時事)

 国際社会では特定国家が国際法や国際秩序毀損行為をしても、必ずしも、これを阻止したり懲らしめることが相応(ふさわ)しくない時がある。

 国際関係学で国家間協力関係を牽引(けんいん)しにくいという点を簡単に説明する時、「鹿狩り童話」を事例に挙げる。ルソーの著作「人間不平等起源論」で提示された話だ。

 数人の猟師がシカ狩りに出た。シカを獲(と)るためには、猟師は各自、持ち場を守らなければならない。ところで、ある猟師が偶然にウサギを発見し、持ち場を離れてウサギを追った。彼はウサギを得たが、他の猟師は隊列を離脱したただ一人の猟師のために、共同の目標であるシカ狩りに失敗することになる。

 国際関係ではたびたびこのようなシカ狩りのジレンマが発生する。ブリュッセルで行われたG7(主要7カ国)首脳会議の共同声明にそれが見られる。

 今回のG7は本来ロシアのソチで開く予定だった。しかし、ウクライナ事態によってロシアを排除し、場所もブリュッセルに変えた。G7首脳は共同声明で、ロシアに対する非難と追加制裁措置を警告した。

 翌日6日、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式でメルケル独首相とオランド仏大統領、オバマ米大統領らG7首脳会議参加者とプーチン露大統領が直接遭遇したが、誰もプーチンに直接的な非難や制裁措置強化を表明しなかった。それだけでなく、フランスはロシアに新型上陸艦さえ販売した。

 国際社会で国家は自国の利益になることなら、ためらいなく鹿狩りを止(や)めて、ウサギ狩りに行くことを確認したわけだ。国際関係で乱舞する修辞を実利のプリズムで必ず再解釈してみることだ。

(禹俊模〈ウジュンモ〉鮮文大教授・国際政治学、6月10日付)