英国自爆テロ、対策強化に向け国際的結束を


 英国マンチェスター市でのコンサート客を巻き添えにした自爆テロは、市内のモスクに勤務する22歳のリビア系英国人が実行犯と判明し、逮捕者も複数に上っている。

 犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)との関係は不明だが、ISがテロを扇動していることは明白だ。事件の徹底解明とともに国際的なテロ対策の強化が急務である。

 犠牲者の多くは10代

 米人気歌手の公演会場となった「マンチェスター・アリーナ」はほぼ満席の2万1000人のファンで埋め尽くされていたという。公演終了後の混雑時を狙った爆発は、ビクトリア駅からそばにあるアリーナの出入り口に連結する通路とチケット売り場付近一帯に広がり、無防備な来場客多数を巻き添えにした。22人の犠牲者の多くは10代の若者であり、中には8歳の少女も含まれていた。

 英国のメイ首相は「ぞっとする、むかつくような卑劣さだ」と強く非難したが、全く同感であり、許し難い犯行だ。英国では3月にも国会議事堂周辺で自動車と刃物を用いたテロが起きた。今回は公演を楽しんだ無辜(むこ)の一般人を無差別に殺害しており凶悪さを増している。

 自爆犯は手製爆弾に多くの釘(くぎ)を仕込んだとみられる。また、不審者を発見しにくい駅とアリーナの連絡通路から出入り口に近づき、コンサートが終わり帰りを急ごうとする人々で混み合う瞬間を選ぶなど、殺傷人数をより多くしようと周到に計算した形跡がある。

 問題は、このような実行犯が現場の雑踏に紛れ込んだ段階での対応が困難なことだ。監視の目を広げ情報の確度を向上させ、計画段階で取り締まるなど未然防止や迅速な対処に向けた取り組みが求められる。

 メイ首相はまた、警戒態勢をテロが差し迫っているという最高レベルの「危機的」に引き上げ、6月の総選挙に向けた選挙運動も中断した。ISや国際テロ組織アルカイダなどはネットワークを通じてテロを扇動している。過激思想に染まった者の犯行が、グループか単独かを問わず、欧州で広がった。

 2015年1月にはパリの仏風刺紙シャルリエブド本社などが銃撃され、計17人が死亡。同11月にはパリで劇場などが襲われ、計130人が死亡した。翌年にはベルギーやドイツでもテロが発生した。

 テロとの戦いはイタリアで開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の主要テーマとなるとみられる。国際社会の結束が不可欠だ。

 わが国は2020年東京五輪・パラリンピックを控え、各会場などで海外からも大勢の来客が予想される。今回の事件は、大規模集客施設などの「ソフトターゲット」におけるテロの脅威の深刻さを物語っており、対岸の火事ではない。

 「準備罪」法案早期成立を

 参院で審議入りする「テロ等準備罪」法案を一刻も早く成立させ、テロ防止に向けた態勢を整えなければならない。

 同法案を「現代版『治安維持法』」などと批判するのは筋違いであり、テロリストに手を貸すに等しい。