ウクライナ東部安定へ露は影響力行使を


 ウクライナでは、大統領選挙後も情勢沈静化の兆しは見えない。まず、注目された話題は、ロシアとウクライナの天然ガス交渉の決裂である。

 欧州連合(EU)が仲介したロシア産天然ガスの対ウクライナ輸出価格協議が物別れに終わり、ロシアはウクライナへのガス供給を停止した。

親露派との戦闘続く

 ロシア政府系天然ガス大手「ガスプロム」は滞納総額約45億㌦(約4600億円)の支払いをウクライナ側に求めてきた。ロシア側はとりあえず、昨年11~12月分の約19億5000万㌦(約2000億円)の支払いを供給継続の条件とした。

 ウクライナ側は支払いと同時の価格変更を提示したが、双方は金額の面で折り合いがつかなかった。交渉決裂でロシア側が代金前払い制への切り替えを決めると、ウクライナ側がこれに応じなかったため、「ガスプロム」社はウクライナ向けガス輸出を停止したのである。

 ウクライナは国内需要の約半分のガスをロシアから輸入してきた。ウクライナ国営ナフトガスは、12月まで備蓄があるため影響は小さいと説明しているが、化学産業などで大量のガスを消費するので、供給停止が長引けば主要産業に大きな影響が出ると予測されている。

 また、欧州で消費されるロシア産ガスの15%はウクライナ経由のパイプラインで送られているが、ウクライナのプロダン・エネルギー相は欧州向けのガスプロムの通過継続は保証すると言明した。ロシア側も天然ガス輸出が経済成長を支えているだけに、いつまでも輸出中止を続けるわけにいかないだろう。

 次に、ウクライナ東部での戦闘が収まらない状況が続いているのも懸念材料だ。東部ルガンスクではウクライナ軍のIL76輸送機が親露派武装勢力の対空砲火によって撃墜され、搭乗していた兵士ら49人全員が死亡するという事件が起きた。4月の「対テロ作戦」開始のあと、一度の軍犠牲者の数としては最大だった。6月半ば現在、ウクライナ軍、親露派勢力と巻き添えになった住民合わせて死者は300人を超えたと伝えられる。

 ポロシェンコ新大統領は就任式直後の6月初め、ウクライナ治安部隊と親露派武装勢力の戦闘が続くドネツク、ルガンスク両州の治安を3カ月で回復すると公約し、停戦の目標期限を定める意向を示した。20日に軍・治安部隊に軍事作戦を1週間中止するよう命ずるとともに、15項目の和平プランを発表した。

 親露派の武装解除を促す狙いがあると見られる。ロシア大統領府は「残念ながら平和や交渉につながるものではなく、ウクライナ南東部の民兵組織に対して武器を放棄させるための最後通告だ。交渉開始という大事な要素が抜け落ちている」と反発する声明を出した。

 クリミア併合も撤回せよ

 プーチン・ロシア大統領はポロシェンコ大統領との電話会談で、東部の緊張緩和や停戦・和平計画の実現に向けた取り組みを支持したと言われる。

 親露派の後ろ盾であるプーチン政権は影響力を行使すべきだ。ウクライナ南部クリミアの併合撤回も改めて求めたい。

(6月22日付社説)