ウクライナ大統領選に向け混乱収拾を


 大統領選挙を6日後に控えたウクライナであるが、状況は依然混沌としている。暫定政権は選挙の準備を着々と進めているものの、親露派が多数の東部ドネツク、ルガンスク両州は、自治権拡大賛成が9割に達した住民投票を終えたあと、選挙ボイコットを公言した。ロシアなど国際社会はウクライナ暫定政権とともに、両州を含む全土での選挙実施に向け、混乱収拾に努めるべきだ。

 ポロシェンコ氏がリード

 当初23人も名乗り出た立候補者は5月半ば現在、19名。いずれの候補も過半数を得られなければ、6月15日に上位2人による決選投票が行われる。大統領選挙と同じ日に、首都キエフとオデッサの市長選挙も実施される予定だ。

 目下のところ、最有力候補は親欧米派のペトロ・ポロシェンコ氏だ。同氏は菓子メーカー「ロシェン」の経営者。「チョコレート王」のあだ名で呼ばれるが、自動車・バス製造、造船所、テレビ局も傘下に収める「ロシェン・グループ」のトップで、米「フォーブス」誌によると、資産は10億㌦というウクライナ有数の大富豪である。

 1998年の政界進出後は、ユーシェンコ、ヤヌコビッチ両政権の下で、国家安全保障・国防会議書記、外相、経済発展・貿易相などの要職を歴任した。最新のウクライナの世論調査によれば、候補者の中で最も高い54・7%の支持率を得て、他の候補者を引き離している。

 とりわけ、有力候補と見なされていたキルギス出身のプロボクシング元ヘビー級世界チャンピオンで、「改革を目指すウクライナ民主連合『ウダル』」党首ビタリ・クリチコ氏が立候補を辞退して、ポロシェンコ氏支持を明らかにしたことで支持率が上がったようだ。

 2番目の有力候補者はユリヤ・ティモシェンコ元首相である。彼女は「オレンジ革命」の立役者の一人で、ユーシェンコ氏とともに注目された。ウクラナ最大の資産家と目されている。だが逮捕歴もあって、国民の信頼は今一つだ。2度目の首相時代の2008年2月訪露し、プーチン首相(当時)と会談、天然ガス輸入価格の引き下げ交渉で成功した。

 前回の10年大統領選挙では、第1回、第2回投票ともに、ヤヌコビッチ候補に敗北した。11年夏、ロシアとのガス契約にかかわる職権乱用事件をめぐり審理妨害で逮捕。同年10月にはキエフ地区裁判所が職権乱用を認定し、禁固7年と賠償を命じる判決を下した。

 当時のヤヌコビッチ大統領は昨年10月、ドイツでの病気治療の名目でティモシェンコ女史の釈放を決めていたが、「革命」のあと釈放され、大統領選挙への立候補を表明した。しかし、世論調査では、9・6%の支持率しかなく、ポロシェンコ候補に大きく水を空けられている。

 ロシアは東部住民説得を

 暫定政権の正統性を認めていないロシアのプーチン大統領も「(ウクライナ)大統領選挙は正しい方向である」と述べて、異を唱えなかった。そうであるならば、ロシアはウクライナ全土で大統領選挙を実施できるよう東部住民を説得すべきだ。

(5月19日付社説)