スリランカテロ、宗教対立を再燃させるな


 スリランカの最大都市コロンボなどのキリスト教会や高級ホテルで、テロとみられる計8回の爆発が起き、日本人1人を含む320人以上が死亡した。

 無辜の人たちを標的にした卑劣で残忍なテロは、断じて許されない。

教会やホテルで爆発

 爆発は教会3カ所とホテル4カ所などで計8件発生。教会はイースター(復活祭)を迎え、礼拝に訪れた人でにぎわっていたという。

 また、ホテルのうち3カ所はコロンボにある五つ星の高級ホテルで、宿泊していた外国人も巻き添えになった。外国人の死者数は30人以上に上る。日本人の死者はスリランカで家族と暮らしていた。

 スリランカ政府は、国内のイスラム過激派「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」の犯行としている。警察はこれまでに約40人を拘束。ウィジャヤワルダナ国防担当国務相は初期段階の捜査の結果として、ニュージーランド(NZ)中部クライストチャーチで3月に起きた銃乱射テロ事件の報復との見方を示した。

 NZの事件では、2カ所のモスク(イスラム礼拝所)が襲撃され、50人が犠牲となった。テロの連鎖を、これ以上許してはならない。

 警察当局は、NTJがキリスト教会などを狙って自爆テロを計画しているとの情報を事前に海外の情報機関から入手し、NTJの動きを警戒していたという。それでも、未然に防ぐことはできなかった。スリランカ政府は原因を究明し、テロ取り締まりを強化する必要がある。

 国際社会の連携強化も求められる。安倍晋三首相は「日本はスリランカ、国際社会と手を携え、断固としてテロと戦っていく決意だ」と訴えた。

 スリランカでは1980年代以降、ヒンズー教徒中心の少数派タミル人の武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」と、仏教徒が主体のシンハラ人が主導する政府が激しく対立した。

 スリランカでは人口の7割を仏教徒が占め、ヒンズー教徒は13%、イスラム教徒は10%、キリスト教徒は7%である。今回のテロで、宗教対立を再燃させてはならない。

 2009年の内戦終結後、スリランカ政府は観光業に力を入れ、欧米や日本から観光客を呼び込んだ。イスラム過激派の攻撃対象となりやすい欧米人の旅行客が増えたことが、今回のテロの背景にあるとの見方も出ている。

 スリランカと同じ南アジアのバングラデシュでは16年7月、地元イスラム過激派ジャマトゥルムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)の分派がレストランに立てこもり、日本人7人を含む人質20人と警官2人を殺害する事件が起きた。テロの脅威は続いており、海外の日本人の安全をどう守るかも大きな課題だ。

情報収集能力を高めよ

 日本では6月に大阪で20カ国・地域(G20)首脳会議、来年には東京五輪・パラリンピックが開かれる。テロ情報の収集能力を高め、テロに備えなければならない。