米朝首脳再会談、一致できないのは当然だ


 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、2回目の首脳会談をベトナムの首都ハノイで行った。

 両首脳は北朝鮮の非核化をめぐって合意できず、文書の署名は見送られた。進展が見られなかったことは残念だが、完全な非核化を実現しないまま制裁解除を求める北朝鮮と一致できないのは当然だ。

北は制裁全面解除を要求

 トランプ氏によると、正恩氏は黒鉛減速炉や再処理施設がある寧辺の核施設などを廃棄する意思を伝えたが、その見返りとして制裁の全面解除を要求。ただ、米側はウラン濃縮施設や核弾頭などに非核化措置の対象を広げるよう求め、寧辺の施設廃棄だけでは「不十分」としてこれを拒否した。

 北朝鮮には高濃縮ウランの製造用と疑われる施設が多数存在するとされている。寧辺の施設はもはや核兵器製造計画の中心ではなく、廃棄しても核兵器製造能力を抑制する効果は限定的だとする専門家もいる。トランプ氏としては、正恩氏の要求は到底受け入れられないだろう。

 昨年6月にシンガポールで行われた初の米朝首脳会談で、両首脳は「朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む」ことで一致した。だが、その後も北朝鮮はひそかに核・ミサイル開発を続けていたとみられている。

 北朝鮮が昨年、核兵器5~7個分に相当するプルトニウムや高濃縮ウランを生産した可能性があるとの米研究機関の報告書も出ている。国際社会を欺くことがあってはならないし、米国をはじめとする関係国も、非核化と称する措置を小出しにして見返りを最大化する北朝鮮の思惑にはまってはならない。

 米側が2回目の米朝首脳会談開催に踏み切ったのは、メキシコ国境の壁建設などをめぐる内政の苦境を外交で打破したいトランプ氏の意向とみられる。一方、正恩氏も今年1月の新年の辞で「米国が一方的に何かを強要しようとし、制裁と圧迫に出るなら新たな道を模索せざるを得なくなる」と述べ、制裁解除ありきの交渉を米側に迫った。

 北朝鮮は正恩氏の今回の外遊を「大長征」と持ち上げ、国内向けにも盛んに宣伝した。しかしトランプ氏は制裁解除に応じようとせず、正恩氏の最高指導者としての威信に傷が付くことは避けられないだろう。

 日本政府は核・ミサイル・拉致問題で北朝鮮の譲歩を引き出すため、米国と連携して圧力を維持する方針だ。これに対し、中国やロシアは北朝鮮の完全な非核化の前に段階的に制裁を緩和することを求めている。懸念されるのは韓国の動きで、文在寅大統領は南北経済協力に意欲を見せ、制裁緩和に期待感を強めている。

日米韓の連携が不可欠

 今回の会談で、北朝鮮の非核化実現が一筋縄ではいかないことが改めて示された。

 一方、韓国は徴用工判決や自衛隊機への火器管制レーダー照射、国会議長による天皇陛下への謝罪要求などで日本との関係を悪化させている。北朝鮮と対峙(たいじ)していくには、日米韓の連携が不可欠だ。日本は韓国に粘り強く、その重要性を訴え続ける必要がある。