日中韓外相会談、対韓関係重視し中国巻き込め


 日中韓外相会談が5年ぶりに日本で開催された。中国、韓国との困難な時期を乗り越え、開催に至ったことをまずは歓迎したい。会談のあった24日、北朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を日本海で発射した。特に脅威に直面している日韓が連携を強め、これに中国を巻き込むべきだ。

防災や経済で関係再構築

 日中韓外相は、北朝鮮に対し国連安全保障理事会決議の順守を強く求めていくことで一致した。影響力ある中国は、安保理で北朝鮮を非難する声明取りまとめに協力すべきだ。

 また日中韓外相は防災、環境、青少年交流、経済の分野で協力することで一致。さらに、中東情勢など専門家と意見交換し、テロ対策について議論を進めていく。これら協力を得やすいところから関係改善に向け、テーブルに着いていくことが肝要だ。

 中国、韓国とは領土・領海問題に火が付いた民主党政権下の2012年から関係が険悪化した。政権交代し自民・公明の安倍政権が発足すると歴史問題で中韓が歩調を合わせ、国際舞台で反日外交を繰り返した。

 この状況に安倍晋三首相、岸田文雄外相が、「地球を俯瞰(ふかん)する」外交で国際社会に戦前の反省および平和国家の道を歩む日本の姿勢について理解を求めてきた。遠方から外交環境を整える努力が、関係が悪化した近隣の中国、韓国に徐々に影響したと言える。

 特に、韓国とは懸案の慰安婦問題で合意する前進があった。会談当日に元慰安婦の女性を支援するため韓国が設立した「和解・癒やし財団」へ10億円を拠出する閣議決定を行い、尹炳世外相との日韓外相会談で合意の誠実な実行が確認された。

 中国に対しては、集団的自衛権の一部を限定的に容認した安保法制など日米同盟が重要な後ろ盾だ。中国は南シナ海、東シナ海への海洋進出を諦めない。南シナ海への中国の領有権を否定したハーグの仲裁裁判判決を無視し、東シナ海に浮かぶ沖縄県・尖閣諸島へは領海侵犯を繰り返している。日中外相会談で沈静化と再発防止を岸田外相が求めたが、王毅外相は「正常に戻った」と強弁した。粘り強い交渉を要するだろう。

 核実験やミサイル発射の暴挙を繰り返す北朝鮮についても日米同盟が不可欠だが、38度線の最前線で対峙(たいじ)する韓国にとっても深刻だ。ミサイル防衛強化のため、米国が求めていた在韓米軍への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を韓国が受け入れた。

 中国は同システムのレーダーが中国軍を探知するとして反対しているが、想定外な北朝鮮の脅威には断固とした措置が要る。理解を得るよう説得し、安全保障環境を整えた上で、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓自由貿易協定(FTA)など経済分野の協力を進めるべきだろう。

日韓連携でアジア安定化

 まずは、米国を共通の同盟国とする韓国との関係改善を重視し、日韓の連携で中国を国際社会の秩序に従って活動するように促してアジアの安定化を図る必要がある。