非難声明見送り、北擁護の本音が露呈した中国


 北朝鮮が「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイルを発射し、弾頭部分が秋田県沖に着弾した問題で、日米などは国連安全保障理事会で報道機関向け非難声明の採択を目指したが、中国が難色を示し見送られた。北朝鮮を擁護する中国の本音が表れたと言える。

THAAD配備に反対

 今回のミサイル着弾は日本の排他的経済水域(EEZ)内で起こった。付近では日本の漁船が操業中だったといい、上空に民間航空機が航行していた可能性もあった。一歩間違えれば大惨事につながるところだった深刻な事態である。

 北朝鮮は事前に何の通告もせず、発射の兆候をつかみづらい移動式発射台が使用されたとみられている。こうした暴挙を当事国はもちろん国際社会が非難するのは極めて当然のことであり、逆にこれを見過ごせば良識が疑われることになる。

 非難声明を取りまとめる段階で中国は、米韓両政府が先月、在韓米軍への配備を正式に決めた高高度防衛ミサイル(THAAD)に対する非難を盛り込むよう逆提案したとされる。しかし、THAAD配備の目的は北朝鮮の弾道ミサイル迎撃にあり、中国の軍事施設監視でもなければ、その攻撃でもない。

 中国が北東アジアで米国との軍事的バランスが少しでも相手側に傾くことを恐れているのは想像に難くない。だが、それがTHAAD配備という韓国の決断にとやかく口を挟む理由にはならないだろう。韓国は、中国が韓国の対北ミサイル防衛を助けないままTHAAD配備に反対することを「主権侵害」とさえ感じている。

 中国としては、韓国へのTHAAD配備や北朝鮮弾道ミサイル発射に対抗する形で強化されつつある日米韓3カ国の連携などを目の当たりにし、これ以上、韓国の立場に理解を示す必要がなくなったのではないか。

 中国は、情勢不安がもたらす自国経済への悪影響や「G2」の一角を担う立場で国際社会での体面を考えて北朝鮮の武力挑発に反対してきたという側面が強く、それは建前にすぎなかったということだ。

 中国の本音は韓半島越しに対峙(たいじ)する日米同盟との軍事的拮抗で優位に立ちたいというものであり、韓国への接近はその手段にすぎない。歴史認識問題で韓国と「反日」で共闘路線を敷いたのは、韓国を取り込もうという戦略的判断があったためだ。

 核実験や長距離弾道ミサイル発射などで国連安保理は度重なる対北制裁決議を採択し、これに中国も賛成したが、国土が隣接する中国の“配慮”で制裁の効果は不十分だと言われる。

 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議で中国は議長国を務めたが、核放棄という目標は完全に色あせ、逆に核開発への時間稼ぎに利用された感は否めない。中国が本気で北に核を放棄させようとしていたのであれば結果は違っていたのではないか。

日米韓は共同歩調で

 北朝鮮問題をめぐり中国を説得する努力は必要だが、安易な期待を抱くのは禁物である。日米韓3カ国は北朝鮮だけでなく中国への対応でも共同歩調を崩さないことが重要だ。