強権に頼る政治のもろさ露呈した中国3中総会


 中国共産党の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)がこのほど終了した。

 昨年同時期に習近平氏が総書記に選出されて1年。中国が直面する歴史的課題に果敢に取り組むかと期待されたが、示された方針は玉虫色の内容で新味は全くなかった。

 「国家安全委」を創設

 典型が国有企業改革だ。3中総会コミュニケでは、資源配分において市場経済の役割強化の方向性を打ち出しながら、一方で「国有経済の支配力を増強する」として国有企業の利権を温存し、むしろ拡大する方向性をも打ち出した。

 国有企業の寡占が公平な競争から新規参入企業を排除し、腐敗の温床となると同時にイノベーションが進まない原因となっている。産業構造の高度化を図る上で国有企業改革は避けて通れない道だ。

 さらにPM2・5による大気汚染などの環境問題に関しても、公害垂れ流しのようなでたらめな基準が、その大きな政治力によってまかり通っている。国有企業改革が停滞すれば解決は期待できない。

 司法改革についても、コミュニケでは「憲法・法律の権威を守り、法律に基づき、独立して公正に、審判権と検察権を行使させる」としている。しかし、中国の司法は共産党の指導下に置かれているため、政治改革が進まなければ「司法の独立」を実現することは難しい。

 今回のコミュニケで注目されるのは、中国が「国家安全委員会」創設に踏み切ることだ。これは中国版NSCとされる組織で、北京・天安門前で起こった突入・炎上事件や山西省の党委員会前での連続爆発事件などを受け、内外の脅威への対策を強化する狙いがある。

 また、沖縄県・尖閣諸島をめぐる日本との対立を念頭に置いたものでもある。日本版NSC(国家安全保障会議)創設の動きに対抗したとの見方もあり、わが国としては注意する必要があろう。

 国家安全委は公安、国家安全、外務、国防など各省を統括する上部機関になり、習氏がトップに就任する見込みだ。そうなれば、習氏は強大な権力を手にすることになる。

 だが、権力と政治的求心力の強さはイコールではない。むしろ強権は両刃の剣で、時に自らを傷つけ墓穴を掘ることにもつながるものだ。

 香港の有力誌「辺境」が最新号で「中国共産党、三年で崩壊」との記事を書いた。その分析が興味深い。

 「まず来年、経済が崩壊。翌年、共産党の秩序が破壊され、2016年には社会の昏睡状態を招く」とし、その理由として、経済的低迷と海外への資本逃避、不動産バブルの崩壊、シャドーバンキングによる金融危機などを列挙している。また、共産党崩壊のプロセスが1988年から91年のソ連に似るだろうと予測している。

 国民の尊厳を重んじよ

 国民一人ひとりの尊厳を重んじ、普遍的価値に根差した政治が行われなければ、国家は衰退する。3中総会は、強権に頼る中国政治のもろさを露呈したと言える。

(11月17日付社説)