北ミサイル着弾、大惨事起こしかねぬ暴挙だ


 北朝鮮が「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイルを同国南西部の黄海南道殷栗郡付近から発射し、東に約1000㌔飛行した後、日本海に落下した。落下海域は日本の排他的経済水域(EEZ)内であり、一歩間違えば大惨事につながるところだった。このような暴挙は断じて許されるものではない。
 
十数分で日本に着弾

 ミサイルが落下したのは秋田県男鹿半島沖約250㌔の日本のEEZ内だった。北朝鮮のミサイルが日本のEEZ内に落下するのは、1998年に発射された「テポドン1」の先端部の覆いが太平洋側EEZ内に落ちて以来2度目のことで、日本海側は初めてだ。

 当時、付近の海域には日本の漁船が航行していたという。幸い被害はなかったが、日本の航空機が上空を通過していた可能性もあった。

 しかも発射の方向次第では西日本全域に届く。日本を射程に入れ、いつでもミサイル攻撃が可能だという脅し以外の何ものでもない。

 目と鼻の先までミサイルが飛んできた秋田県では一時緊張が走った。地元の漁業協同組合は被害有無の確認に追われ、総務省消防庁からミサイル発射の連絡を受けた県は市町村への連絡に奔走した。

 今回の発射は車両に設置された移動式発射台からだった可能性が指摘されている。事前に発射の兆候をつかむのは難しく、突然発射された場合、わずか十数分後には日本に着弾する。避難しようにも時間の余裕がなくて避難しきれない。

 日本は今回のミサイル発射で、北朝鮮が日本全域を射程に入れた弾道ミサイルを実戦配備させているという現実を改めて突き付けられた形だ。

 北朝鮮の弾道ミサイルに対抗する日本のミサイル迎撃能力は本当に大丈夫なのか。海上自衛隊のイージス艦に配備されているSM3で大気圏外での迎撃を行い、万が一撃ち損じた場合、陸上自衛隊配備の地対空ミサイル、パトリオット3(PAC3)が上空20~30㌔で迎撃する二段構えだ。

 秋田県の沖合に着弾するまでミサイル防衛(MD)網がどう作動したのか点検すべきだ。破壊措置命令の常時発令を検討しているが、さらに万全を期すための強化策も求められる。

 北朝鮮の狙いは何か。先月、在韓米軍に高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備することを米韓両政府が正式に発表した直後、北朝鮮は西部から日本海に向け短距離弾道ミサイル「スカッド」1発と「ノドン」2発を発射した。

 今回の発射がTHAAD配備や軍事演習を行う米韓を牽制(けんせい)するものなのか、さらに日本に対するメッセージを含ませたものなのか。北朝鮮の真意を見極める必要がある。 

日米韓はMD強化

 北朝鮮は金正恩委員長が権力を継承して以降、30発以上の各種弾道ミサイルを発射し、そのたびに射程や命中率などを改善させている可能性がある。日米韓3カ国がMD網の強化を中心に断固たる姿勢で臨み、北朝鮮の揺さぶりに動じないことが重要だ。