日独首脳会談、中国にらんだ安保協力強化を


 安倍晋三首相は、来日したドイツのメルケル首相と会談し、安全保障分野での協力を強めるため、情報保護協定の締結で大筋合意した。

 欧州連合(EU)の盟主であるドイツとの安保協力強化の意義は大きい。

2プラス2発足の構想も

 情報保護協定はテロなどについての秘密情報の交換や、提供を受けた情報の管理に関する取り決め。日本はこれまで米国やオーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)など8カ国・機関と締結している。

 日独両国の連携強化は、中国の台頭をにらんだものだ。ドイツ首相を13年以上も務めるメルケル氏は、今回で5度目の来日だが、中国へは10回以上も訪問するなど中国重視の立場で知られてきた。

 ところが、ドイツでは世界有数の産業ロボット製造会社クーカが中国家電大手に買収されるなど、ハイテク、インフラ企業の中国企業による買収が急増している。このため中国に対する警戒心が強まっており、メルケル氏は日本との距離を一段と縮める必要性を感じたのだろう。

 安倍首相は「日独のパートナーシップを一段高みに上げ、両国の地平を拡大していくことを確認できた」と強調。中国を念頭に「力による一方的な現状変更の試みに反対し、国際秩序の維持のために連携していく」と述べた。

 日独両政府には外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を発足させる構想もある。日本はドイツと並ぶ欧州主要国である英仏両国とは、既に2プラス2を開いている。

 ドイツとの安保協力が遅れている背景には、両国が第2次世界大戦でイタリアなどと枢軸国を形成し、連合国に敗北したという歴史がある。しかし、覇権主義的な動きを強める中国を牽制(けんせい)するためにも、両国には2プラス2開催を早急に実現して安保協力を一層強化することが求められる。ドイツは対中警戒感からインド太平洋地域への関与にも関心を強めているとされている。

 一方、両首脳はトランプ米政権の保護主義的な動きを踏まえ、自由貿易の推進で一致し、6月に大阪市で開く20カ国・地域(G20)首脳会議の成功に向けた連携を確認した。メルケル氏の来日は、日本とEUの経済連携協定(EPA)が発効した直後で、両首脳は経済協力の発展を確認した。

 米国との貿易摩擦の影響で、中国の2018年の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年比6・6%増と28年ぶりの低い伸びにとどまった。

 中国の成長鈍化で、世界経済の先行きに対する不透明感は強まりつつある。両首脳は、保護主義がどの国の利益にもならないことを米中両国に訴え続ける必要がある。

WTO改革でも協力を

 ただトランプ政権の対中制裁関税発動は、中国による知的財産権侵害を理由とするものだ。日独両国は、中国に実効性ある知財保護制度の整備を求めるとともに、機能不全との指摘もある世界貿易機関(WTO)の改革でも協力すべきだ。