ペンス氏来日、北朝鮮への圧力を緩めるな


 安倍晋三首相は、来日したペンス米副大統領と会談し、北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題の解決に向け協力していくことで一致した。

アジア歴訪の最初に訪問

 会談後の共同記者発表で、首相は「朝鮮半島の完全な非核化に向け、国連安全保障理事会決議の完全な履行が必要だとの認識で一致した」と説明。「特に日本にとって最も重要である拉致問題の早期解決に向け緊密な連携を確認した」と強調した。

 ペンス氏はアジア歴訪の最初に日本を訪問。首相とペンス氏はシンガポールの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議や、パプアニューギニアのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する。これに先立ち、北朝鮮問題で連携を確認した意義は大きい。

 対北制裁をめぐっては、国際社会の結束の乱れも見られる。中国とロシア、北朝鮮は先月の外務次官協議で制裁見直しを求める共同声明を発表。また、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による9月の南北首脳会談の際には、東西両海岸沿いの鉄道・道路連結の着工や、条件付きではあるが開城工業団地の操業や金剛山観光の正常化などを盛り込んだ平壌共同宣言が発表され、韓国内では制裁破りになりかねないと懸念の声も上がっている。日米は核・ミサイル・拉致問題が解決されるまで北朝鮮への圧力を緩めてはならない。

 首相は今国会の所信表明演説で、拉致解決に向けて「私自身が正恩氏と向き合わなければならない」と述べた。被害者家族の高齢化が進む中、米国との連携強化で一日も早く全被害者の帰国を実現する必要がある。

 一方、首相とペンス氏は日米物品貿易協定(TAG)交渉を通じ、双方の利益となる貿易・投資の拡大で一致。ただ、ペンス氏は日本市場に貿易障壁が残っているとの不満を表明した。

 米側は農業分野の市場開放を強く求めている。だが日本としては、環太平洋連携協定(TPP)の合意水準以上の譲歩に応じるべきではない。

 TPP離脱を表明したトランプ米政権は中国との貿易摩擦を激化させ、世界に保護主義的な動きが広がった。対中制裁関税は知的財産権侵害を理由とするものだが、世界経済への打撃となりかねない。国際社会は世界貿易機関(WTO)の監視機能強化などを進め、自由貿易体制を維持することが求められる。

 米国を除くTPP参加11カ国の新協定「TPP11」が12月30日に発効する。もともとTPPには、物品関税の撤廃・削減だけでなく、知財の保護や貿易・投資の先進的なルール導入などによる「中国包囲網づくり」の側面があった。首相は米国にTPP復帰を粘り強く促していかなければならない。

地域の真の発展を図れ

 首相とペンス氏の会談後に発表された共同声明では、インド太平洋地域で中国に対抗して「質の高いインフラ投資」を展開する米国に呼応し、日本は液化天然ガス(LNG)の供給施設建設事業などに、官民で100億㌦(約1兆1000億円)を投資する目標を掲げた。地域の真の発展を図る必要がある。