党首討論、大局的観点なく物足りない


 安倍晋三首相(自民党総裁)と立憲民主党の枝野幸男代表らによる党首討論が行われた。

 約1年半ぶりの開催となったが、大局的観点からの政策論議はあまりなかった。物足りず、期待外れであったと言わざるを得ない。

 枝野氏は「森友」追及

 枝野氏は学校法人「森友学園」「加計学園」問題について首相を追及。森友問題では、安倍昭恵首相夫人付の政府職員が財務省に問い合わせをしたことを取り上げ、昭恵夫人が国有地の大幅な値引きに関与したのではないかとの疑惑に言及した。

 これまでに何度も繰り返されてきた質問だ。森友問題が最初に報じられてから1年以上が経過するが、首相や昭恵夫人が関与したという決定的な証拠はいまだに出てこない。

 森友問題をめぐっては、決裁文書の改竄(かいざん)や交渉記録の破棄など政府の不祥事が続いた。野党が責任を問うのは当然である。だが、事実かどうかも分からないことを議論のテーマにすることが、党首討論にふさわしいとは思えない。その意味で「森友・加計問題への総理夫妻の関与は今や明らか」として首相の辞任を求めた共産党の志位和夫委員長の姿勢にも首を傾(かし)げる。

 党首討論は首相が述べたように「骨太な議論」をする場であり、国民もそれを期待しているはずだ。日本維新の会の片山虎之助共同代表は森友・加計問題について「似たような質問、似たような答弁で、国民はうんざりしている」と述べたが、その通りである。野党は党利党略に走って、いつまでも国民を無視するような議論を続けることがあってはなるまい。

 一方、国民民主党の玉木雄一郎共同代表は、トランプ米政権が輸入車への最大25%の関税を検討していることに言及。「実際に行われてしまえば、日本経済にとっては大打撃」と指摘した上で、トランプ大統領に対して「言うべきことは言う」よう首相に注文した。

 北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題についても「米国や韓国に頼むだけでなく、自立的、自主的な外交を示すべきだ」と強調した。日本が独立国家として自主的な外交を行うのは当然だ。

 しかし、北朝鮮問題では米韓両国との連携が極めて重要だ。北朝鮮は日米韓の連携を嫌い、対話攻勢などで何とかくさびを打ち込もうとしている。日米韓の一致結束は北朝鮮への大きな圧力となっていると言えよう。

 玉木氏は北方領土問題をめぐっても、ロシアのプーチン大統領が返還後の北方領土に米軍基地が設けられることを懸念していると指摘。トランプ氏から基地を置かないとの確約を取れば交渉が進展すると提案した。

 だが、プーチン氏は北方領土を極東の軍事的要衝と位置付けて軍事拠点化を進めている。米軍基地を設けないと約束したとしても、それで返還が実現するかは疑問だ。

 建設的な議論を期待

 玉木氏が外交課題に触れたとはいえ、全体的には骨太な議論からは程遠いものだった。これでは党首討論の存在意義も失われてしまうのではないか。建設的で緊張感のある討論を期待したい。