18年度予算案、重点政策もっとメリハリを


 2018年度予算案が閣議決定された。一般会計総額97兆7128億円と、6年連続で過去最大を更新した。

 予算案の目玉は、安倍晋三首相が「国難突破」へ向け掲げた安全保障対策の強化と「人づくり革命」「生産性革命」の実現政策である。厳しい財政事情の中、制約も少なくないが、メリハリをつけ重点政策を進めてもらいたい。

税収は27年ぶりの高水準

 18年度予算案について、麻生太郎財務相は会見で「経済再生と財政健全化を両立できた」と述べたが、その努力の跡は一応うかがえる。

 国の政策的経費である一般歳出は、17年度当初比5367億円増の58兆8958億円。このうち、最大の支出項目である社会保障費は32兆9732億円。増加額は4997億円で、2年に1回の診療報酬改定で薬価を大幅に引き下げるなどし、財政健全化計画で定めた年5000億円増の枠内に何とか収めた。

 好調な税収を反映して、新規国債発行額は33兆6922億円と8年連続で縮減し、基礎的財政収支は10・4兆円の赤字と前年度の10・8兆円の赤字から小幅ながら改善する。

 核・ミサイル開発を進める北朝鮮情勢などをにらみ、防衛費に陸上イージスなど弾道ミサイル防衛経費を盛り込んだことは評価できる。

 安倍首相の看板政策である「人づくり革命」では、社会保障制度を全世代型へ転換し人への投資を拡充するとして、保育の受け皿拡大や幼児教育の段階的無償化、保育士の処遇改善、給付型奨学金の拡充などに関連経費を配分した。先に決定した「新しい経済政策パッケージ」に基づき、後年度に加味または実施されるものもあるが、2兆円規模(うち3000億円は財界負担)では物足りなさが残る。制度設計が先送りされたものもあり、狙いをより明確にしさらなる充実を望みたい。

 「生産性革命」では、十分な賃上げや設備投資を行った企業に対する税額控除のほか、産官学連携での高効率・高速処理AIチップや、量子コンピューターなどの光・量子技術の研究開発を促進する。「生産性革命」の実現を支える法人税減税は3年間の時限措置のため、固定費の増加となる賃上げを企業がどこまで持続するか不透明な部分もあるが、政府としての意欲はうかがえる。

 税収は前年度当初予算に比べて2・4%増の59兆790億円を見込んだ。1991年度以来、27年ぶりの高水準である。緩やかながらも着実な景気回復や所得環境の改善が続くとの見通しからである。現政権が発足して以来ほぼ毎年税収は増加しており、同政権の成長重視の政策は間違っていないと言える。

債務の対GDP比漸減を

 税の無駄遣いはもっての外であり、持続可能な社会保障制度の構築に向け不断の改革は欠かせない。好調な税収を財政健全化にもっと回すべきだとの批判もあるが、健全化目標は債務残高の対GDP(国内総生産)比の漸減とすることが現実的である。硬直的な目標設定は景気、経済の好循環にマイナスとなり慎みたい。