自民改憲論点、9条2項は削除が望ましい


 自民党憲法改正推進本部は来年通常国会への憲法改正案の提出に向けて「論点取りまとめ」を了承した。年内をめどとした意見集約は先送りする。9条改正や緊急事態条項の創設については意見が分かれ、両論併記となった。

 年明けの論議では独立国家に相応(ふさわ)しい憲法となる改正案をまとめるよう期待したい。

 意見集約は来年に先送り

 「論点取りまとめ」では9条について、自衛隊根拠規定の追加案、「国防軍」創設を盛り込んだ同党改憲草案を踏襲した案を併記した。

 憲法改正の大きな目的は条文と現実の矛盾を解消することだ。現憲法を制定した帝国議会での審議以来、9条の是非をめぐって激しい議論が繰り返されている。しかし、今日まで条文が改正されることなく、わが国は政府の解釈によって陸海空の自衛隊を整備してきた。

 9条2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という規定と、国際社会で軍として認められている自衛隊の姿には大きな乖離(かいり)がある。いつまでも憲法解釈によって自衛隊を存続させるのは無理がある。

 自衛隊が発足して60年以上が経(た)つが、憲法学者の間では自衛隊違憲論が多数である。最高裁判所は統治行為論をもって司法審査の対象から外し、判断を示さない。

 安倍晋三首相は憲法記念日の5月3日に改憲派集会に寄せた映像メッセージを通して、9条1項と2項はそのままにした上で、自衛隊の根拠規定を追加することを提起した。その理由も、戦後長らく安全保障案件の国会審議で続いてきた自衛隊の憲法解釈をめぐる論争に決着を付けるためだ。

 一つの問題提起であり、首相の改憲に向けた意気込みは評価されるべきである。首相は19日に都内で行った講演で「五輪が開催される2020年、日本が大きく生まれ変わる年としたい。憲法について議論を深め、国のかたち、在り方を大いに論じるべきだ」と述べ、20年までの改憲に意欲を示した。

 同時に首相は、核・ミサイルの開発を続ける北朝鮮の脅威などを念頭に「国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」と述べた。わが国は憲法解釈上、「戦力」とならないとする必要最小限の防衛力に留(とど)め、違憲の疑いが起こらないように「専守防衛」に心を砕いてきた。

 例えば周辺国との兵員数の比較でも、自衛隊の隊員数は今年3月時点で約22万人だが、これは韓国66万人、北朝鮮120万人、中国229万人などと比べて非常に少ない。

 国の規模相応の防衛力を

 わが国の海岸線は世界6位の3万3889㌔と長く、島の数は6852、領海・排他的経済水域(EEZ)は世界6位の約450万平方㌔㍍と広い。1億2000万人の人口、世界第3位の経済力、38万平方㌔㍍の国土の国に相応しい防衛力・防衛態勢を築く必要がある。

 9条を守り、国は守り切れない本末転倒を正す改憲をすべきだ。2項は削除が望ましい。