衆議院選挙が公示され、いよいよ戦いの火蓋が…


 衆議院選挙が公示され、いよいよ戦いの火蓋が切られた。12日間の短期決戦だが、それにしても選挙戦突入前の動きが目まぐるしかった。

 安倍晋三首相の突然の解散表明、小池百合子氏の希望の党代表就任、前原誠司代表が推進した民進党の希望への駆け込み、さらに民進党左派、枝野幸男氏の立憲民主党の結党。

 中でも安保法制に反対していた民進党が、憲法改正と安保法制支持を掲げる希望の党に合流するというのは、前代未聞の椿事(ちんじ)だった。とにかく生き延びるため、なりふり構わぬ行動に出た。

 その後の分裂は想定内だったかどうかは分からない。しかしその結果、筋金入りの左翼からタカ派の保守までを含む議員の寄せ集め集団だった民進党が実質的に解党。まだまだ未知数の部分が多いが、希望の党という保守系の政党が生まれたことは、政界地図の大きな変化と言える。

 安倍首相にしても、小池代表や前原氏にしても、打算的な動機があることは間違いない。だがこれまでのところ、改憲という課題を抱える日本政治を分かりやすくする方向に進んでいると言える。

 そこに、人間が自分勝手に動いていても、実はそれを超えた絶対精神(理性)に操られているとするヘーゲルの「理性の狡智(こうち)」が働いていると言うと大袈裟(おおげさ)だろうか。選挙では常に、ムードや気分でなく、理性的な判断がわれわれ有権者に求められる。今回の選挙ほど、その見識が問われている選挙はないように思われる。