総選挙公示、「大局」に立って針路を問おう


 衆議院選挙があす、公示される。「政権選択」の選挙だ。安倍政権の5年を問い、今後の日本の針路を定める。

 どの政党に政権を委ね、未来を託すのか、有権者は選挙戦を通して各党の政策を見定めてほしい。

三つ巴の構図生まれる

 今選挙では「自民・公明」「希望・維新」「立憲民主・共産・社民」の三つ巴の構図が生まれた。有権者には何よりも「大局」に立った判断が求められる。世界は今、大変革期に入っており、戦後政治の物差しではとうてい未来を切り拓けないだろう。

 「2025年問題」に着目したい。と言っても国内のそれではなく、世界の2025年問題だ。リーマン・ショックで米国中心の世界経済秩序が揺らいだ08年、米国家情報評議会は未来予測の報告書を発表し、25年には「第2次大戦後に構築された国際体制はほとんど見る影もなくなる」とし、それに至る期間を「新秩序への移行期」と位置付け、世界が不安定化すると警鐘を鳴らした(『世界潮流2025』)。

 とりわけ中国が「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測し、また科学技術の急速な発達によってテロリストらが容易に大量破壊兵器を手にすることが可能になり、「核の拡散」はより現実味を帯びて地球規模で「不安定勢力」が台頭するとした。

 この報告からほぼ10年経(た)ち、予測は現実のものになろうとしている。東アジアでは中国の軍事拡張と北朝鮮の核ミサイルの脅威がわが国に迫っている。不安定化が一段と強まったと見てよい。安倍政権の5年は特定秘密保護法や安保関連法、テロ等準備罪などの成立に見られるように不安定化への対応に一定の成果を上げた。

 問題は25年に至る国づくりの在り方だ。現行憲法のままで安保環境の激変に耐え、国民を守り抜くことができるのか。この疑問が与野党を問わず、政治に突き付けられている。だから憲法9条改正が議論の俎上(そじょう)に載る。これは当然の成り行きだ。

 自公政権批判の受け皿となるべく登場した希望の党は、安保法制を容認し、9条を含め改憲論議に賛成するとしている。戦後政治を象徴する「不毛の憲法論議」に終止符を打つ英断だ。

 これまで有権者は外交・安保政策の共通基盤が存在しないため政権交代をためらうジレンマに陥っていた。野党第1党からマルクス系リベラル勢力が「排除」されたため、このジレンマから解放された。その意味で真に政権選択を問う選挙となる。

 国内の25年問題も想起しておきたい。「団塊の世代」が全て75歳以上の後期高齢者になり、高齢化が一段と進む。出生率は相変わらず低く、人口減に拍車が掛かる。地方では存続が危ぶまれる「限界自治体」が生まれつつある。暮らしをどう守るのか、社会保障や福祉の在り方が問われている。

目立つ「ポピュリズム」

 だが、与野党いずれにも「ポピュリズム(大衆迎合主義)」的な施策が目立つ。ここでも大局を見据える目が必要だ。選挙戦の「劇場」に惑わされず、後悔しない選択を探りたい。