参院1票の格差、「合区」の弊害も考慮せよ


 「1票の格差」が最大3・08倍だった昨年7月の参院選について、最高裁は「合憲」とする判断を下した。
 
最大3・08倍で合憲

 「合憲」は裁判官15人中11人の多数意見。隣接選挙区を統合する「合区」などの是正策が評価されたものだ。最高裁が2010年選挙(最大格差5・00倍)と13年選挙(同4・77倍)を「違憲状態」と判断したことを受け、昨年の参院選では隣接する「鳥取・島根」「徳島・高知」を一つの選挙区にした。

 これについて、最高裁は「参院の創設以来初めての合区を行うことで、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた格差が縮小した」と指摘。「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあったとは言えない」と結論付けた。

 格差是正の努力を認めた最高裁の合憲判断自体は妥当だと言える。確かに、格差是正は重要だ。しかし、投票価値の平等のみを追求すれば地方の声が届きにくくなる恐れがある。

 合区をめぐっては、選挙区が広いため、有権者に候補者の顔が見えにくくなるという指摘もある。地域の事情より格差是正を優先することが、有権者の理解を得られるだろうか。

 今回の判決では「違憲」とする反対意見を述べ、選挙無効を認めた裁判官もいた。この裁判官は「投票価値の平等は、絶対的な基準として真っ先に守られるべきものだ」としているが、偏向していると言わざるを得ない。裁判所は合区の弊害も考慮した上で判断を下すべきだ。

 合区導入を定めた改正公職選挙法は付則で、19年参院選に向けた選挙制度の抜本的見直しを行い、「必ず結論を得る」としている。だが、実現できるかは不透明だ。今後、人口減少と東京一極集中が進めば、合区が拡大することも考えられる。そうなれば、地方の意見がますます反映されにくくなろう。

 「良識の府」と言われる参院は、もともと地域代表的な性格を持つ。1983年の最高裁判決は、参院議員が都道府県単位の選挙区割りで選出される仕組みについて「都道府県は歴史的、政治的、経済的、社会的に一つのまとまりを持つ単位で、国民の意見を公正・効果的に国会に代表させるための方法」と評価した。

 今回の判決も、選挙制度の決定に当たっては「一定地域の住民の意思を集約的に反映させる観点から、政治的に一つのまとまりである都道府県の意義や実体などを考慮すること自体が否定されるべきではない」としている。

 自民党は各都道府県から参院議員を最低1人は選ぶと明記する憲法改正案を検討している。この案が実現すれば、格差の合憲性を問われることはなくなるだろう。

 衆院との役割分担論じよ

 しかし、この改憲案の目的が合区解消のみであってはならない。参院議員を「地方代表」と位置付けるのであれば、衆参両院の役割分担についても考える必要がある。

 これは衆院にとっても大きなテーマだ。各党は衆院選で両院の在り方に関して論じ合ってもらいたい。