施政方針演説、立党の原点踏まえ未来拓け


 通常国会が召集され、安倍晋三首相が2012年末の政権復帰から5回目となる施政方針演説を行った。

 その最大のテーマは「新しい国づくりに挑戦する」ことだ。内閣支持率は高い水準を維持しているが、長期政権による驕(おご)りも指摘されている。安倍首相は「慣れからくる油断」を自ら戒めることはもちろん、自民党立党の原点である憲法改正の「初心」を踏まえて「未来を拓く国会」にすべきである。

国づくりの基本は教育

 今国会は、16年度第3次補正予算案、17年度予算案などのほかに、天皇陛下の退位をめぐる法案や組織犯罪処罰法改正案などの重要法案が山積している。

 これらに加えて首相は「憲法施行70年の節目に当たり、次なる70年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と訴えた。今国会での改憲に向けた議論の深化の重要性に触れたもので、未来を託された国会の責任は極めて大きい。

 だが改憲が国民投票を経て実現することを考慮すれば、国民世論の喚起も大切だ。「威勢のよい言葉だけを並べても、現実は1㍉も変わらない」と首相自ら言うように、対中包囲網の形成を海外で呼び掛けるのと同じぐらいの意気込みで、国民に向けて理想的な国家像について具体的に訴え続けることも肝要ではないか。

 今回の演説の特徴は、序盤で外交政策を詳述したことだ。中国の軍事的膨張、米大統領の交代、北朝鮮の脅威などわが国を取り巻く安全保障環境が緊迫化しているからだろう。日米同盟を日本外交の基軸とした点は当然だ。日米首脳会談の早期実現に意欲を示したが、これも緊急性のある課題だと言える。

 「積極的平和主義」の旗の下、南スーダンやアデン湾で黙々と汗を流す自衛隊の活動の意義は大きい。国際貢献をさらに進めることも、新たな国の在り方に合致していると言えよう。

 トランプ米大統領の登場によって環太平洋連携協定(TPP)の行方が懸念されるが、「ぶれない」で公正なルールに基づいた21世紀型の経済体制の構築を目指す日本政府の方向性には同感である。

 物足りなかったのは、教育に関してだ。「子供たちが夢に向かって頑張れる国づくり」の中で「個性を大切にする教育再生」「誰にでもチャンスのある教育」について言及。フリースクールの子供たちへの支援拡充や高校生への奨学給付金の拡充、幼児教育の無償化などを指摘した。これらが重要であることは間違いない。

 ただ、自民党の新綱領(05年)が「日本人に生まれたことに誇りがもてる、国際感覚豊かな志高い日本人を育む教育」を目指したことを想起すれば、高い志を持った日本人の育成についても触れてもらいたかった。国づくりの基本は人づくりであり、教育なのである。

腰を据え一致点見いだせ

 衆院の解散はいつか、についてさまざまな憶測が飛び交うが、与野党ともに浮つかず、じっくり腰を据えて一致点を見いだすよう努めてもらいたい。