ミャンマー、日本は国造りへ一層の支援を


 安倍晋三首相はミャンマーの事実上の最高指導者であるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相を異例の国家元首並みの待遇で迎えるとともに、関係強化のため今後5年間で官民合わせて8000億円規模の支援を行うと表明した。

 ミャンマーは中国とインドに挟まれ、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で最も西に位置する戦略的要衝国である。海洋進出を目指し、ミャンマーへの接近を強める中国への対抗措置として、今回の日本の支援は適切なものと評価される。

 米が制裁を全面解除

 安倍首相は「日本はミャンマーの友人として、官民を挙げて新政権を支援する。今回の訪日を契機に両国関係を飛躍的に発展させたい」と強調した。

 ミャンマーは軍事政権下で各国の制裁を受けて孤立していたが、米国は先月、軍部に近いミャンマー企業への経済制裁をおよそ20年ぶりに全面解除した。これによってミャンマーへの送金などが容易となった。米企業をはじめ各国の投資が活発化すると予想されている。

 豊富な資源と労働力から、ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」とも呼ばれており、300余りの日系企業が進出している。日本はミャンマーへの投資を呼び込むのに不可欠な電力や水道、道路などのインフラ整備と技術移転を行う方針だ。

 だが、それだけでなく、リーダーになるような人材の育成などで、ミャンマーの発展と民主化に向けて重要な役割を果たすことが求められる。日本は軍事政権の時代も制裁を科さず、人道支援などで関係を保ってきた実績があるのが強みだ。

 われわれに期待を抱かせるのは、スー・チー氏の国造りへの情熱だ。

 ミャンマーでは、昨年11月の総選挙でスー・チー氏率いる最大野党の国民民主連盟(NLD)が圧勝して今年3月に政権交代が実現した。

 しかし国民の圧倒的な支持にもかかわらず、軍事政権時代に作られた憲法の規定により、外国籍の家族がいるスー・チー氏は大統領になることができず、側近のティン・チョー氏が就任した。

 スー・チー氏は新設された国家顧問のポストに就いて、事実上政権を率いるという変則的な形でありながらも実績を挙げている。

 新政権発足に当たって、スー・チー氏は経費削減のために省庁の統廃合を進め、大臣などのポストの大幅な削減に踏み切った。また、汚職の追放や軍事政権の下で投獄された政治犯の釈放に力を注いだ。

 さらに英国からの独立以来、60年以上にわたって続いてきた少数民族の武装勢力との内戦終結を最優先課題に掲げた。今年8月には、主要な武装勢力が参加した和平会議の開催にこぎ着けた。

 インド太平洋戦略に重要

 安倍首相はアジアとアフリカという「二つの大陸」、インド洋と太平洋という「二つの海」の交わりが地域の安定と繁栄の鍵とする「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱している。今回のミャンマー支援はそのための重要な布石と言える。