内閣再改造、飽くなき挑戦で難題克服を


 安倍晋三首相が内閣再改造を行った。麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官ら屋台骨を残し安定性を重視する一方で、初入閣を8人起用するなど閣僚「待機組」にも配慮した形だ。 安倍首相は前回の内閣改造の際にも「未来へ挑戦」することの意義を強調したが、今回も「未来チャレンジ内閣」と自ら命名した。わが国の前途には国内外の難題が山積している。飽くなき挑戦で一つ一つ克服していくことを望みたい。

 公約実現の責任果たせ

 首相は記者会見で、経済を最優先課題であるとし、政策総動員でデフレからの脱却に取り組むことを強調した。首相には大勝した参院選の公約を実現する責任がある。秋の臨時国会に提出予定の第2次補正予算案を速やかに成立させ、アベノミクスを加速させなければならない。

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記念写真に納まる安倍晋三首相(前列中央)と閣僚ら=3日午後、首相官邸

 そのために「最大の挑戦」となる目玉人事が、新設した働き方改革担当相だろう。首相の信頼の厚い加藤勝信氏が1億総活躍担当相と兼任する。首相は「『非正規』という言葉をこの国から一掃する」と意気込むが掛け声倒れにならないよう、年度内をめどにまとめる実行計画に具体的かつ実現可能な内容を盛り込むべきだ。

 稲田朋美防衛相の起用も「挑戦」と言えよう。北朝鮮が「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイル1発を日本の排他的経済水域(EEZ)に初めて落下させた。明らかに脅威は深刻さを増している。中国も海警局の公船を領海内にしばしば侵入させ国際法を軽視している。

 米大統領選の結果次第では対日防衛協力が変化する可能性がある。安保法制は整備されたが、米国、韓国との防衛協力を進展させられるのか。新防衛相の責務は極めて大きく、冷静かつ強力なリーダーシップが必要だ。

 石破茂氏が閣外に出たことは、首相にとって非常に気掛かりだろう。政権に遠心力が働く可能性があるからだ。石破氏としては次期総裁選への準備に踏み出し、対立軸を形成する構えだ。党内に多様な意見があり議論をすることでエネルギーを生み出すことは大切である。国民への公約を実現するという大義を前提として活発な議論が起きることを期待したい。

 特に重視すべきは憲法改正に関する議論だ。先の参院選で改憲に前向きな勢力が国会発議に必要な3分の2以上の議席を占めた。衆参両院で発議可能な環境が整備されたことになり、首相の悲願達成へ大きな一歩となった。この「時」を最大限生かすべきである。

 自民党は改正案をまとめてはいるが、次の課題は改正項目を具体的に絞り込むことだ。党運営を任された二階俊博幹事長は「慎重」な対応をする考えを明らかにしているが、パイプの太い公明党との話し合いをスタートさせ、丁寧に議論を積み上げてほしい。

 政局抜きで改憲議論を

 首相が「憲法審査会の中で、所属政党にかかわらず、政局のことを考えず議論を深めてもらいたい」と述べたのはもっともだ。次期臨時国会の前に決まる民進党の新執行部や他の政党も、国民最優先の視線で改憲論議に参加すべきである。