北海道、2議席確保へ熾烈に争う自・民


16参院選 注目区を行く(7)

 「私は、知名度はありませんが、市議と道議で20年以上地方政治に携わってきました。何とか国政に送り出してください」―こう叫ぶのは、自民公認の新人・柿木克弘。

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 北海道は今回の参院選で改選議席数が2から3に増えた。これまで自民と民進で議席を分け合ってきたが、両党とも最重点区に位置付けて、2議席目を確保しようと熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げている。

 自民は現職の長谷川岳と柿木、民進は現職の徳永エリ、元衆院議員の鉢呂吉雄を擁立。これに共産の森英士が虎視眈々(たんたん)と三つ目の議席に滑り込もうと狙っている。北海道は事実上この5人が争う激戦区だ。

 自民党道連会長の伊達忠一参院議員は、「今年4月に行われた北海道第5選挙区の衆院補選では参院選の前哨戦として勝たせていただいたが、本選で2議席取らなければ意味がない。1議席ではダメ。2議席確保で勝利」と力を込めて語る。

 自民は当初、札幌市は知名度のある長谷川、地方は柿木という構図を考えていたが、具体的な票割りはしていない。従って、初めての国政選挙で知名度の低い柿木は公示前の自民党の調査で4番手。しかも共産と5位を争うような位置にいた。ところが、新党大地が柿木を全面的にバックアップし、代表の鈴木宗男、衆院議員の鈴木貴子らが応援演説に駆け付ける。さらに公明も柿木支援に動きだしたことから「(公示から10日目の7月1日時点で)ようやく横一線の状況」(柿木陣営)だと分析している。

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参院選立候補者の街頭演説に耳を傾ける聴衆=6月24日午後、札幌市中央区

 一方、民進党は今年4月、2番手の候補として出馬した鉢呂に全面的に肩入れする。衆院議員を7期23年務め、野田佳彦内閣で経済産業相に就任したものの「死の街」発言で数日後に辞任。その後、2012年12月、14年12月の衆院選で相次いで敗れ、政界を引退したとみられていたが、今年に入って民進の岡田克也代表が鉢呂に立候補を要請。当初、態度を保留していたが、連合北海道や北海道農民連盟などからの支援があって出馬を決めた。

 民進は今回、安保法制廃止、憲法9条をはじめとする憲法改正反対、格差是正、アベノミクス失敗を訴えており、とりわけ北海道の農協出身の鉢呂は安倍政権が推進しているTPP(環太平洋連携協定)反対を訴え農民票の獲得を目指している。民進は「北海道で2議席取って安倍政権に打撃を与えたい」と意気込む。

 これに対して自民党は円安を背景とした外国人観光客の増加や道内求人倍率の上昇、堅調な個人消費などを挙げてアベノミクスが道内でも着実に成果を挙げていることを強調。中でも柿木は「攻めの農業」など35項目に及ぶ地方の活性化策を打ち出し、広い北海道を遊説して駆け回る。6年前に選出された現職候補が各政党の公募・要請という形で政界入りしたのに対し、柿木は自民、鉢呂は民進(当時民主)という畑の中で育ってきた。それだけに両候補に対するそれぞれの党の思い入れは強い。他方、自民、民進が拮抗し、票の行方次第では議席獲得もあるのではと共産党は思いを募らす。(敬称略)

(2016参院選取材班=窪田伸雄、山崎洋介、岩崎哲、豊田剛、武田滋樹、小松勝彦、湯朝肇)

(終わり)