安倍外交、世界平和へ一層の貢献を


 安倍晋三首相は今年、各国首脳との会談のみならず国際会議での発言を通して積極的平和主義に基づく外交を展開した。来年も世界平和への一層の貢献が求められる。

米議会で歴史的演説

 特筆すべきは4月、米上下両院合同会議で日本の歴代首相初となる演説を行い、未来志向で強固な日米同盟について語ったことだ。日米が力を合わせ自由や民主主義など共通の価値観を世界に広めていく「希望の同盟」を築こうと呼び掛けた。

 また、中国が海洋進出を活発化させていることを念頭に「太平洋からインド洋にかけての広い海を、自由で法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」と強調。積極的平和主義を旗印に「世界の平和と安定のため、これまで以上に責任を果たしていく」と表明した。

 中国は不法な人工島造成を行う南シナ海とともに東シナ海でも力による現状変更を試みている。沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺では、中国公船が今年も領海侵入を繰り返した。東シナ海のガス田開発をめぐっては、中国が日中中間線付近で新たな海洋プラットホームを一方的に建設していることも明らかとなっている。

 9月には集団的自衛権行使の限定容認を柱とする安全保障関連法が成立した。中国を抑止するには、日米同盟の一層の強化が欠かせない。

 これとともに「平和の海」の実現には、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンやベトナムはもちろん、インドやオーストラリアなどの民主国家との連携も必要だ。安倍首相は今月、モディ印首相やターンブル豪首相と会談し、安全保障での協力推進で一致した。

 一方、関係が冷却化していた韓国については、安倍首相と朴槿恵大統領が11月、初めての会談を行った。両国間には、いわゆる従軍慰安婦問題などの懸案もあるが、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威に対処するには関係改善と信頼醸成が求められる。

 その北朝鮮は昨年7月、日本人拉致被害者らの安否を再調査する委員会を設置したものの、いまだに誠意ある報告がない。こうした非道は許されない。安倍首相は「全ての被害者家族が自身の手で肉親を抱きしめるその日まで私たちの使命は終わらない」と何度も強調している。被害者の全員帰国を何としても実現しなければならない。

 北方領土問題を抱えるロシアとは、交渉進展を目指し、プーチン大統領の年内来日を模索してきた。しかし、ロシアはウクライナ南部クリミア半島の一方的な併合の強行で経済制裁を受けている。来日見送りはやむを得ないだろう。

テロ根絶へ国際連携を

 安倍首相にとっては、パリの事件などで脅威の高まるテロとの戦いも来年に向けた大きな課題だ。今年1月には日本人2人が過激派組織「イスラム国(IS)」に殺害された。来年5月には日本で主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開かれる。

 首相は共謀罪創設など法整備を急ぐとともに、テロ根絶のために国際社会での連携構築に尽力すべきだ。

(12月20日)