通常国会閉幕、国難に挑むステップとなった


 通常国会が閉幕した。法案成立率97・5%の数字が示す通り、自民・公明連立与党が極めて安定した国会運営を果たした。安倍内閣の掲げた「好循環実現国会」は、順調な本年度予算成立をはじめ主要企業の久々のベースアップなど賃上げや、求人倍率の上昇、4月の消費税率引き上げ以降の株価も1万5000円台を維持する効果に表れた。

 安保環境は依然厳しい

 内憂外患の国難克服に向け発足した安倍政権は、昨年夏の参院選でねじれ国会を解消して今年の通常国会に臨んだ。内憂を生んだ国政の停滞は脱したと評価できる国会だったといえる。

 だが、賃上げや求人倍率の好転も緒に就いたばかりであり、これに伴い企業間、地域間の格差も生じている。アベノミクス第三の矢である成長戦略が骨太の方針として閣議決定されるが、本格的な経済成長の軌道に乗るかは予断を許さない。

 中国の海洋進出による外患は緊張の度を増している。南シナ海、東シナ海の支配を強化し、すでにベトナム、フィリピンに威圧的な攻撃的行動を繰り返しているほか、尖閣諸島に対しては艦艇の領海侵犯、航空機の領空侵犯を繰り返し、自衛隊機にも中国軍機が接近して危険な行為を繰り返している。

 このような安全保障上の厳しい環境に備えるため、安倍晋三首相は集団的自衛権の行使容認に向けた政府憲法解釈の変更に意欲を見せ、反対する野党による「立憲主義」批判など国会の論戦でも揺らぐことなく毅然(きぜん)とした答弁を貫いた。

 首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書を受け、焦点は自公の与党協議に移ったが、会期中の閣議決定に至らず、合意に向けた協議が続いている。安保上の国難対処のためにも早期の合意が望まれる。

 議論の過程で、憲法解釈変更によって集団的自衛権の行使を容認しようとする首相を批判する民主党の海江田万里代表ら野党や公明党内から「憲法改正でなぜ行わないのか」との発言があった。これを反対のための詭弁(きべん)とさせずに、今後、国会において、政府が憲法解釈変更をするまでもなく立法府が責任をもって憲法改正を国民に発議するという行動をとるべきだ。

 通常国会では国民投票法が改正され、憲法改正手続きの環境は整った。既に衆参で憲法調査会が報告をまとめて現憲法には時代の変化で現実と乖離(かいり)が生じ見直すべき点が多いとしている。長年憲法を改正する法整備もせずに「立憲主義」を説く資格があるか疑問だが、今後、改正を現実的に審議していくべきだ。

 政府与党は慢心戒めよ

 野党は弱さだけでなく、未熟な姿もさらけ出した。みんなの党から分裂した結いの党との合流をめざした日本維新の会が分党したが、民主党の一部との合流による政界再編を期待したものだ。民主党も海江田代表に批判的なグループが代表選前倒しを求めるなど拙速な動きがあった。数合わせに奔走しても国民の信頼は得られまい。

 一方、「一強多弱」で政府・与党に慢心が生まれ、問題発言や失言が出てきた。緊張感の緩みを戒めていくべきだ。

(6月24日付社説)