世界日報 Web版

「来訪神」無形遺産、誇り持って次世代に継承を


 秋田県男鹿市のナマハゲなど、古くから続く民俗行事「来訪神仮面・仮装の神々」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることとなった。

 文化の基層に根差したこれらの伝統行事を、誇りを持って継承する励みとなることを期待したい。

教育的観点からも評価

 無形文化遺産への登録は2016年の「山・鉾・屋台行事」以来で国内では計21件となる。全国各地の行事を「来訪神」としてグループ化したことが、登録につながった。

 安倍晋三首相も「心からうれしく思う。幾世代にもわたり、各地域で受け継がれてきた『来訪神』行事を、誇りを持って次の世代へ継承するとともに、国内外に発信していきたい」とのメッセージを寄せている。

 「来訪神仮面・仮装の神々」は、男鹿のナマハゲ、能登のアマメハギ(石川県輪島市、能登町)、米川の水かぶり(宮城県登米市)、甑島のトシドン(鹿児島県薩摩川内市)など8県10行事で構成される。

 来訪神は、正月や季節の変わり目など節目の時に、神の使いに扮装(ふんそう)した住民が家々を訪れ、災厄をはらい福をもたらす民俗行事である。

 外部からの来訪者に宿所や食事を提供して歓待する風習は、日本各地で認められる。日本民俗学の泰斗、折口信夫は、外から来訪する「客人(マレビト)」という概念を鍵に日本の神々や信仰の本質に迫った。

 「古事記」の出雲神話で大国主命の国造りを助けた少彦名命(スクナヒコナノミコト)は、天乃羅摩船(アメノカガミノフネ)に乗って波の彼方からやって来たとされる。

 来訪神や客人信仰については諸説あり起源もはっきりしないが、わが国文化の基層に根差す、ユニークな行事であることは間違いない。

 ユネスコの政府間委員会は「子供たちに道徳や行儀を教え、家族との絆を強め、地域の伝統への敬意を増進させることで、子供の教育に重要な役割を果たしている」と、教育的側面からも評価している。

 今回の登録を契機に、これら民俗行事の意義をまず多くの国民が再認識することが重要だ。その上で、そのユニークさと、自然や季節と共に生き、一年の幸を願う人々の祈りなどの普遍性を世界に発信していきたい。

 登録された来訪神行事はいずれも国の重要無形民俗文化財に指定され、保存団体などには助成金も出ている。しかし、これら行事のほとんどが地方や離島のものであり、過疎や少子高齢化が進んでいるため、伝統を守り継承していくことが簡単ではなくなっている。

地域活性化につなげたい

 今回の登録は、行事の継承をバックアップすることが期待されるが、より具体的には、観光などに結び付けることで地域の活性化につなげたい。

 生活や信仰に根差した行事であるだけに、安易な観光化は問題だ。しかし、これら行事を集落の外にも開放し、地域に人を呼び込むなどのアイデアで、来訪神が来訪者を招くという構図も悪くない。保存継承と地域の活性化へ官民で知恵を絞っていきたい。