世界日報 Web版

安田さん解放、一層のテロ情報収集力向上を


 内戦下のシリアで武装勢力に拘束されたジャーナリストの安田純平さんが解放された。

 安田さんは隣国トルコの入管施設で保護された後、日本に帰国した。無事に帰国できたことを喜びたい。

トルコとカタールが仲介

 安田さんは2015年6月、取材目的でトルコ南部のハタイ県アンタキヤからシリア北部イドリブ県に徒歩で密入国し、直後に武装勢力に拘束されたとみられている。16年3月に安田さんとされる男性の動画がインターネット上に投稿され、それ以降も複数回、同様の画像や動画が確認された。

 拘束期間は3年4カ月に及んだが、健康状態に特段の問題はないという。警察当局は今後、拘束の状況などについて聞き取りを行う方針だ。

 これまでにも13年1月のアルジェリア人質事件や15年1月の過激派組織「イスラム国」(IS)による邦人殺害事件など、日本人が海外でテロの犠牲となる事件が起きている。政府は15年12月に首相官邸直轄の「国際テロ情報収集ユニット」を新設。イスラム地域の事情や語学に精通した職員が現地の情報機関と情報を共有できるルートを構築したことが安田さんの解放につながった。

 安田さんは04年4月にイラクで武装組織に拉致され、3日後に解放された。シリアに関しては11年以降、政府が邦人に退避勧告を出していたにもかかわらず、入国して武装勢力に拘束された。

 ただ、どのような事情があったとしても政府には国民の安全を守ることが求められる。これからも日本人が海外で武装組織などに拘束される事件が起きないとは言い切れない。政府は今回の経験を生かし、テロ情報の収集力を一層向上させる必要がある。

 安田さんの解放をめぐる交渉では、トルコとカタールの仲介が実を結んだ。菅義偉官房長官は日本による身代金の支払いを否定する一方、解放について「国際テロ情報収集ユニットを中心にカタールやトルコに働き掛けた結果だ」と指摘。「首相からも両国に強く依頼した」と述べた。

 安田さんはシリアで反体制派の最後の拠点となったイドリブ県で拘束されていたとみられている。シリアのアサド政権と対立してきたカタールやトルコは反体制派に強い影響力を持つ。

 またシリア内戦でアサド政権が優勢となる中、撤退が選択肢に入ってきた武装勢力にとって人質を抱えていることが重荷になり、それが安田さんの解放に有利に働いたとの見方もある。アサド政権を支えるロシアとトルコは今年9月、政権軍と反体制派の間に非武装地帯を設けることで合意したが、これには反体制派の居場所をなくす中長期的な狙いがあるとされる。現地の情勢を含むさまざまな要因が解放に結び付いたと言えよう。

本格的な情報機関創設を

 20年東京五輪・パラリンピックを控える中、テロ対策の重要性は増している。

 日本がテロ対策や安全保障の面で情報収集力を高めるには、国際テロ情報収集ユニットの体制強化だけでなく、本格的な情報機関の創設も検討すべきだ。