米中関係悪化、放置できない共産党覇権主義


 ポンペオ米国務長官が中国で王毅国務委員兼外相らと会談した際、王氏は最近の米国の対中政策を批判し、ポンペオ氏も中国と根本的な不一致があると反論するなど論争になった。双方の関係悪化は貿易摩擦だけでなく、根底に共産党一党独裁の中国の覇権主義に対する民主主義国の譲れない価値観がある。

 ペンス氏が宗教弾圧批判

 王氏の念頭には、国連安全保障理事会でのトランプ米大統領発言や、米ハドソン研究所でのペンス米副大統領演説などがあったとみられる。

 トランプ政権は米通商法301条に基づいて、中国による知的財産権侵害への制裁関税を7月以来3回発動したが、中国は摩擦回避のための対米貿易協議を拒否し、正面から対決した。また、米国内でトランプ氏を批判する本が発売されると、中国政府系メディアが大きく取り上げるなど露骨に敵視した。

 一方、トランプ氏は9月の国連安保理会合で「11月の中間選挙に中国が介入しようとしている」と述べ、共和党政権が負けるように中国が画策していると批判。中国の習近平国家主席について「もう友人ではないかもしれない」述べ、昨年来の「特別な人物」との評価を変えた。

 その背景を詳細に説明したのがペンス氏の演説だ。ペンス氏は政権発足以来、トランプ氏は中国と習氏との関係を重視したものの、中国が政治、経済、軍事、プロパガンダなどあらゆる手段を通じ、かつてないほど米国の政策や政治に干渉していると述べて具体例を示した。

 特に見落としてはならないのが、中国共産党の膨張主義と宗教弾圧に触れたことだ。ペンス氏は、第2次大戦前に中国において米キリスト教宣教師が福音を伝え、大学を設立し、同大戦では同盟国として団結しながら、1949年に共産党が政権を取った後に米中関係が途絶えた近代史から振り返っている。

 その後の米中国交正常化、ソ連崩壊による冷戦後の対中援助拡大について、中国の自由化を想定した選択だったと説明。しかし、主に米国の対中投資で国内総生産(GDP)を急成長させた中国が、米国の最先端の軍事技術や民間技術を盗み、軍事転用して米国の軍事的優位を脅かしていることを非難した。

 また、中国は自国民のすべてを支配する類例のない監視国家体制を強化していると指摘。9月には中国で最大の地下キリスト教会を閉鎖して、聖書を燃やし、信徒を投獄し、カトリック司教任命についてバチカンと合意したことを厳しく批判した。

 さらに抗議の焼身自殺者が相次ぐチベット仏教への弾圧、ウイグル文化を根絶するためのウイグル人イスラム教徒の投獄などを挙げた。由々しき問題であり、これまで巨大市場に目が眩(くら)んで批判を避けてきた民主主義諸国は反省すべきだ。演説を高く評価したい。

日米は結束して対処を

 中国共産党の覇権主義は、信教をはじめとする自由と民主主義を脅かす。ペンス氏は「日本の施政下にある尖閣諸島周辺」での中国公船の巡回を南シナ海問題と共に問題視している。覇権主義拡大を防ぐため、結束して対処すべきだ。