世界日報 Web版

「あすの会」解散、被害者権利確立の意義大きい


 犯罪被害者の権利確立のため活動してきた「全国犯罪被害者の会」(あすの会)が解散し、約18年の活動に幕を閉じた。

 加害者の人権ばかりが重視されてきた中、被害者の人権に目を向け、刑事裁判への参加に道を開くなどの功績を残した。その意義は大きい。

 刑事裁判への参加実現

 あすの会を2000年1月に設立した岡村勲弁護士も、犯罪被害者の一人だ。1997年10月、代理人を務めていた旧山一証券の株取引をめぐり、損失を出して逆恨みした男に妻を殺害された。

 しかし当時、被害者遺族であっても刑事裁判は傍聴席からしか聞けず、公判記録の閲覧も認められなかった。被害者は「裁判の部外者で、証拠品の扱いだった」(岡村氏)という。

 被害者や遺族らが会員となったあすの会は、署名活動や国会への陳情などを通じて、被害者の権利保護を初めて明記した犯罪被害者等基本法の成立(2004年)や、刑事裁判への被害者参加制度の導入(08年)、殺人など凶悪事件の公訴時効撤廃(10年)などの実現に尽力した。

参加制度によって、被害者らは刑事裁判で被告に質問したり求刑について意見を述べたりできるようになった。被害者権利の確立に努めてきたあすの会の歩みを高く評価したい。

 この制度に関しては「裁判が報復の場になる」との反発もあった。だが、今ではすっかり定着している。司法の現場からは「被害者の顔が見えるようになり、状況は大きく変わった」との声が上がっている。裁判官の一人は、基本法制定前は「裁判は被告のため」という意識が強かったが、「被害感情を深く理解した上で、判断できるようになった」と話している。

 被害者や遺族の立場であったからこそ、司法の在り方を大きく変えることができたとも言えよう。とはいえ、心の傷を抱えながら運動を続けることは負担も大きかったに違いない。あすの会の会員は、自分が関係する事件は既に裁判が終わっているにもかかわらず、将来の被害者のことを考えて活動してきた。岡村氏をはじめとする会員の勇気をたたえたい。

 今回解散を決定したのは、被害者を取り巻く環境が改善されたことやメンバーの高齢化が理由だという。現在の会員は約270人で、新規の加入や相談もほぼなくなっていた。

 東京都内で開かれた最後の集会で岡村氏は「きょうもあしたも新たな被害者は生まれている。これからの被害者問題は国と国民が担っていく」と述べた。私たちは岡村氏の呼び掛けに応えていかなければならない。被害者への支援ををめぐっては課題も残されている。経済的援助や日常生活のサポートなどの充実が求められよう。

 社会全体で治安向上を

 岡村氏は「誰もが犯罪被害者になる可能性がある」とも話している。新潟市では先月、小学2年の女児が下校中に連れ去られ殺害されるなど凶悪な事件は後を絶たない。

 心に深い傷を負う被害者や遺族を減らすためにも、警察はもちろん社会全体で治安向上への取り組みを進める必要がある。