山の日、ルール体得したプロに学べ


 きょうは山の日。昨年から施行された国民の祝日で、今年は2回目。

 日本の国土は7割が山地で、人々は山を崇(あが)め、そこから恵みを受け、山と共に生きてきた。その歴史を踏まえ、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日として制定された。その恩恵を次世代に引き継いでいくことを銘記する日でもある。

 増え続ける傾向の遭難

 山の日を記念して全国大会が山野の豊かな栃木県の那須町で行われる。大会のテーマは「山と共に~人と自然がつながる社会へ~」で、山に関する歴史や文化の伝承、自然体験の機会創出、環境保全、遭難事故や災害への対応など、さまざまな課題の解決に向けた施策の展開につなげようというもの。

 この日を盛り上げるため、東京タワーでも大展望台までの外階段を朝9時からオープンし、山頂と見なした大展望台からの景色を楽しんでもらう。

 山の日が制定された背景には自然環境についての認識の深まりがある。全国大会の理念の中に「山は、命の源となる水を生み、森林や田畑を潤し、海を育てます」とあるように、山が人間社会にとっての恩恵の源として位置付けられている。

 近年、登山のスタイルや装備の改良にも驚くような変化が見られる。1970年代半ば、防水性透湿性素材であるゴアテックスが誕生して雨具に使用され、80年代にはベースレイヤーやフリースが開発されて化学繊維が衣類の主流になった。横長のキスリングザックは使用されなくなり、縦長のナイロン製インナーフレームザックに替わる。

 2000年代には山スカートが発売されて、山ガールと呼ばれる女性ハイカーが急増した。また都会ではフリークライミングのジムが流行していく。登山家の竹内洋岳さんは12年、日本人として初めて8000㍍峰全14座を登頂する記録を打ち立てた。山の登り方、楽しみ方が多様化してきたのである。

 山ガールたちに愛読されている登山ガイドの本を開くと、持ち物はファッションであり、個性や趣味に合った山を選び、食事もおしゃれだ。

 登山の多様化の一方、依然として問題なのは山岳遭難の発生件数や遭難者数が増え続ける傾向にあることだ。今年6月に警察庁が発表した「平成28年における山岳遭難の概況」によると、発生件数2495件で、遭難者数は2929人。統計の残る1961年以降、前年に次いで過去2番目に高い数値だ。

 遭難の原因に関しては、天候についての不適切な判断、不十分な装備、体力的に無理な計画など、知識、経験、体力の不足が指摘されている。これらはすべて登山の基礎が習得されていないことによるものだ。

 精神を浄化する登山

 そのような点から言えば、登山のプロに学ぶことが重要になる。彼らは破ってはいけない山のルールを体得しているからだ。アマチュアとプロの交流こそが登山活動を発展させる。

 読書も大事だ。山岳文学は書かれることが少なくなったが、名著はたくさんある。登山は総合された文化であって、名著もまた、精神を浄化させてくれる。