東京にもヒアリ、情報共有し水際対策徹底を


 強い毒を持つ南米原産のアリ「ヒアリ」が、神戸港はじめ名古屋港、大阪港そして東京・大井埠頭にあるコンテナ内で見つかった。

 今後ヒアリが確認されれば、すぐ防除できるよう、監視を強化することが肝要だ。

気候変動で外来種増

 ヒアリは赤茶色で体長2・5~6㍉、肉眼では一般のアリと見分けるのが難しい。刺されると激しい痛みを生じ、息苦しさやめまい、かゆみに悩まされる場合もある。体質によっては強いアレルギー反応を起こし、死亡するケースも海外で報告されている。万一刺された時は冷静に対処し、症状が重くなれば、すぐ医療機関で治療を受ける必要がある。

 東京港の大井埠頭では100匹以上のヒアリが見つかった。貨物船で中国・広東省から香港を経由し、先月末に同埠頭に到着、陸揚げされたコンテナの中にいた。他にもいる可能性がある。早急に埠頭周辺で緊急調査を行い、殺虫餌を置くなどの対策を講じることが重要だ。

 兵庫県尼崎市では神戸港から運ばれたコンテナの中に幼虫や卵を含む500匹超のヒアリがいたほか、繁殖能力を持つ女王アリや雄アリも確認された。名古屋港、大阪港でも相次いで見つかったことを考え合わせると、ヒアリが国内に営巣し定着するリスクを否定できない。

 既に国土交通省は、コンテナ貨物の定期航路で中国と結ばれた全国63港に重点駆除を求めている。ヒアリが見つかれば、すぐさま駆除することができるよう関係省庁間の情報共有体制をさらに強化し、水際対策を徹底すべきだ。

 ヒアリは2000年代に生息地を拡大した。現在は南米、北中米だけでなく、オーストラリアや中国、台湾などにも定着している。

 国際自然保護連合(IUCN)は「世界の侵略的外来種ワースト100」に挙げている。日本も外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定し、警戒してきたが、ついに侵入を許すことになった。

 今日、交通機関が発達し、人や物の往来が活発になるにつれ、生物や細菌が国境を越え移動する機会は格段に増えた。その影響が懸念される。

 数年前、西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱は、感染が確認された国・地域が25に上り、世界を震撼させた。また、蚊を媒介として感染するジカ熱やデング熱は、日本国民を不安にさせた。

 地球温暖化による気候変動の影響で、予想外の外来種侵入の可能性についても決して無関心ではいられない。

駆除体制に一日の長

 一方、わが国は検疫、駆除体制に一日の長があり、その実績もある。例えば、渡り鳥が運んできたウイルスにより、過去何度か各地で発生した鳥インフルエンザの拡大を阻止し、短時間で収拾してきた駆除の手際の良さは高く評価されている。

 環境省は今回、ヒアリが定着している台湾で死亡例がないことを強調し、その危険性をあおらないよう注意している。国民も冷静に対処し、正確な情報を得るよう努めるべきである