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受動喫煙対策、健康被害減少へ強化は当然


 政府は「飲食店は原則禁煙」などの受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案を今国会に提出する方針だ。

 厚生労働省の有識者検討会が昨年8月に取りまとめた報告書によれば、受動喫煙で肺がんの死亡リスクが約3割上昇し、心臓病や脳卒中なども含めた死者は年1万5000人を超える。健康被害を減らすために対策を強化するのは当然だ。

 法案への賛否割れる自民

 日本は2020年に東京五輪・パラリンピックを控える。世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」の推進で合意している。近年の開催国は全て罰則付きの対策を講じていた。しかし日本の受動喫煙対策は努力義務にとどまり、WHOに最低レベルと判定されている。五輪を観戦に来る訪日客のためにも、実効性ある対策で汚名を返上したい。

 厚労省は昨年10月、病院や官公庁などは敷地内または建物内禁煙、飲食店などは喫煙室の設置可能な原則建物内禁煙とする案を公表した。

 今年に入って法案の概要を示したが、自民党部会での反対意見を受け、30平方㍍以下のバーやスナックは例外とするなどの修正案をまとめた。

 それでも、経営悪化を懸念する飲食業界は反対の姿勢を崩そうとしない。自民党内でも推進派と慎重派の対立は解けていない。背景には、自民党が葉タバコ農家を有力な支持基盤に抱えていることがある。

 慎重派の言い分は「健全な分煙社会を目指すべきだ」というものだ。しかし「たばこ規制枠組み条約」の指針は、屋内禁煙が唯一の解決法としている。喫煙室を設けたとしても、出入りの際にたばこの煙が漏れ、従業員や利用客が受動喫煙のリスクにさらされるためだ。その意味では、今回の法案でも不十分だと言える。

 厚労省は修正案公表の際、アルゼンチンのサンタフェ州では規制後もバーやレストランの売り上げは減少せず、米カリフォルニア州などではむしろ増加したとする調査結果を提示。国内でも自主的に禁煙とした店の95%で売り上げが変わらなかったとする愛知県の調査などを挙げ、必ずしも減収につながらないことを強調した。

 WHOの報告でも全面禁煙による減収はないとされている。政府は飲食業界の理解を得るための努力を重ねる必要がある。

 海外では、飲食店を含む公共の場を屋内全面禁煙とする国が14年末時点で英国やオーストラリアなど49カ国ある。中でも豪州は「禁煙国家」を目指し、たばこ増税や箱への大きな警告表示義務付けなどで、1995年に25%だった喫煙率を13%前後まで下げた。日本でも喫煙率低下に向けた取り組みを進める必要がある。

 公共の屋内全面禁煙を

 安倍晋三首相は今国会冒頭の施政方針演説で「受動喫煙対策の徹底」を挙げた。

 今回の法案への賛否が割れる党内をきちんとまとめ、まずは今国会で着実に成立させるべきだ。その上で、将来的には公共の場における屋内全面禁煙を実現したい。