鳥インフル、今後も十分な警戒が必要だ


 新潟県の二つの養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの感染が確認され、計55万羽が殺処分された。青森市のアヒル農場2カ所でも多数のアヒルが殺処分された。

 国内の養鶏場などで飼育されている鳥の感染は、2015年に佐賀県有田町で発生して以来、約2年ぶりだ。今後も十分な警戒が求められる。

 新潟と青森で感染確認

 新潟県では関川村と上越市の養鶏場で感染が確認され、県の職員と災害派遣の要請を受けた自衛隊員が24時間態勢で作業を行った。関川村では約31万4000羽、上越市では約23万6000羽が殺処分された。31万羽が処理されたのは、79年ぶりに国内での感染が確認された04年以降、1カ所としては最大規模となる。

 一方、青森県の2カ所の農場は同じ会社が所有するもので、計2万羽以上が殺処分された。両県は家畜伝染病予防法などに基づき、発生地点付近につながる主要道路に消毒ポイントを設けたほか、養鶏場や農場周辺を鳥や卵の移動を制限する区域に指定した。

 検出されたウイルスはいずれもH5N6型だった。同型のウイルスは韓国で感染が広がっており、日本国内でも野鳥の死骸などから検出されている。環境省は先月、約2年ぶりに野鳥の監視体制を最も高い「レベル3」に引き上げた。

 これまでも日本では鳥インフルエンザによって毎年のように被害が生じてきた。特に11年1~3月には宮崎県の8市町で13例が確認され、100万羽以上が殺処分された。

 感染を避けるには、養鶏場への出入り制限や靴の消毒などの徹底が欠かせない。養鶏場の周囲に防鳥ネットを張り、野鳥のふんを小動物が鶏舎に持ち込まないように建物の穴をふさぐなどの対策も必要だ。

 もっとも、完全にウイルス侵入を防ぐのは難しい。感染が確認された場合、早急に全羽を殺処分する以外に拡大を防ぐ方法はない。このことを養鶏農家は改めて肝に銘じなければならない。政府は殺処分された鳥の評価額相当分の手当金交付など、十分な支援を行うことが求められる。

 地元住民の間では不安の声も広がっているようだ。しかし、鳥インフルエンザが鳥から人に感染する恐れはほとんどない。鶏肉や卵を食べた人が感染した例もない。こうしたことを政府は周知徹底し、風評被害を防ぐべきだ。

 両県とも移動制限は今月末には解除される見通しだ。ただ今回の感染確認後も、北海道苫小牧市や宮城県栗原市で回収した野鳥の死骸からウイルスが検出されている。

 今季は全国9カ所でウイルスが確認された。全国の養鶏農場は、今後も十分な警戒を続ける必要がある。

 国際協力の一層の進展を

 日中韓3カ国は昨年9月の農相会合で、鳥インフルエンザや口蹄疫など国境を越えて広がる家畜伝染病対策をめぐって連携を強化することで一致した。被害最小化に向け、人材育成や情報共有などの面で国際協力をさらに進展させたい。