防衛法制、国際常識に沿ったものにせよ


 昨年は集団的自衛権行使の限定容認を含む防衛法制の制定問題で明け暮れたが、「次は経済の番」ということで、防衛問題は忘れられた感がある。

 限定容認によって日米安保条約への信頼性は持ち直すが、これで混迷している現在の国際社会で日本の安全確保が全うされるわけではない。このため、安倍内閣が取り組むべき防衛上の課題は多い。

国際法に従うべき自衛隊

 中国は昨年も沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返すなど、強引な海洋進出を継続した。北朝鮮も核・ミサイル開発をやめようとしない。

 日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。これを踏まえ、昨年9月に集団的自衛権行使の限定容認を柱とする安保関連法が成立した。

 防衛法制は多少改善されたというものの、依然として治安維持組織として誕生した警察予備隊当時の法制、法解釈を引きずっている。国家防衛を主任務とする自衛隊の法制を諸外国と同様なものにする努力を怠ってはならない。

 警察法などの法制は、国内の治安維持を目的とするものだ。だが、一国の軍事力は主として国際社会で行使されるので、従うべきは国際法である。武力紛争絡みで、国内法を守っていても「国際武力紛争法」に反していたならば、自衛隊員は「戦争犯罪人」とされるのである。

 日本は2009年からソマリア沖の海賊対策として自衛艦を派遣しているが、「自衛官には司法警察権がない」として、海上保安官を同乗させている。警察官や海上保安官の司法警察権は、日本の領域内でのみ行使できるものである。

 国際社会での行動の法的論拠は国際法であり、海賊に対処する権限は国際法によって海軍に付与されている。この常識が防衛・外交当局、内閣法制局にも欠けている。

 安倍晋三首相は積極的平和主義を唱え、国際社会の秩序維持に貢献する考えを示している。それならば、国際常識に従う必要がある。

 その一方、冷戦が終わって数年で「平和な時代の到来」の夢は破れた。このため、主要国のみならず発展途上国でさえも、新たな軍事情勢に合致する防衛力の充実に努めた。

 こうした状況下で、日本だけは防衛費の削減が続き、第2次安倍内閣になって漸く下げ止まった。この間、最新兵器の価格上昇等で自衛隊の取得兵器は減少した。

 その上予算制約は、ミサイル・弾薬・燃料購入など表面に表れにくい分野にしわ寄せされ、それは同時に防衛関連企業の生産停止、倒産を招いている。このことは従前から低い自衛隊の抗戦能力の一層の低下をもたらしている。

国民の国防意思強めよ

 国家間の利害対立を軍事力で解決しようとする国家は、相手国民の国家防衛意思の強さを重要視する。

 国力の大きさに比して貧弱な防衛力しか保有せず、防衛の重要な機能を他国との同盟に大きく委ねる国民は、国家を防衛する意思が弱いとみなされることを自覚すべきである。

(1月3日付社説)