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15年の世界、遅きに失した米自由航行作戦


 オバマ米政権の安全保障戦略の特徴は「アジア・ピボット(回帰)」あるいは「アジア・リバランス(再均衡)」と呼ばれるアジア太平洋地域重視の方向性を明確に打ち出したことである。とりわけ、中国の急速な軍備増強と海洋進出による脅威を背景にした重点配備を考えてきた。

中国人工島の12カイリ内へ

 中国は過去1年間に、領有権を主張する南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で七つの人工島を造成。滑走路や港、軍事施設などを建設している。

 オバマ大統領は10月、「航行の自由作戦」の実施を決断し、米海軍のイージス艦ラッセンは、中国が「領海」と主張する人工島周辺12カイリ内を航行した。今後、3カ月に2回程度の巡視活動をするという。

 米海軍は、国際法上認められている公海上の航行の自由と領海の無害通航権を保証する意図で、論争が続く海域を通過する作戦を通常から行っている。これを南シナ海でも実行するという考えである。こうした活動は対中抑止の観点に立って、一層頻度を高めなければならない。

 ただ、中国の人工島造成は少なくとも2013年から始まっている。米国がもっと早くから対処していれば、事態は違っていたのではないか。オバマ大統領の決断は遅きに失したと言わざるを得ない。

 米国の安全保障専門家の多くは、南シナ海における中国の一方的な進出に対し強く出るべきだと主張してきた。米国防総省や米軍は今年5月、艦船と航空機を人工島の12カイリ以内に派遣する方針を中国に通告していた。

 だが、オバマ大統領やホワイトハウスは地域の緊張の高まりを懸念し、こうした方針を受け入れてこなかった。中国を挑発するような作戦行動は慎まなければならないという不文律が見え隠れしてきた。

 オバマ大統領は9月の米中首脳会談で習近平国家主席を説得できると踏んでいた。会談では、中国の人工島造成に「懸念」を重ねて表明。これに対して、習主席は「南シナ海の島は中国固有の領土。領土主権と海洋権益を維持する権利がある」と手前勝手な主張をし、米中間の溝は全く埋まらなかった。

 中国は最高実力者、故鄧小平氏の存命当時に樹立した南シナ海、東シナ海内海化計画に基づいて着々と実績を積み上げてきている。台湾や南シナ海、沖縄県石垣市の尖閣諸島を含む東シナ海問題の全てがこのことと関連している。

 かつて習主席は、オバマ大統領に「広く大きな太平洋には米中の両大国を受け入れる十分な空間がある」と述べたことがある。太平洋を米国と二分し、西太平洋の覇権を握る意図を示したものだ。

対中抑止で成果上げよ

 オバマ大統領は就任以来、「米国は太平洋国家であり続ける」と述べてきた。だが、中国の南シナ海での振る舞いを見ても分かるように、アジア重視戦略が十分な効果を上げているとは言い難い。

 任期が残り1年となったオバマ政権の軍事力を背景としたリーダーシップと実効性ある対中抑止政策への真剣さが、ますます必要とされる。

(12月30日付社説)