高速増殖炉、資金と人材の活用追求を


 高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、原子力規制委員会(規制委)は、もんじゅの運営体制の抜本的改善を求める勧告を、監督する馳浩文部科学相に出すことを決めた。勧告は日本原子力研究開発機構(原子力機構)に代わる適切な運営主体を求めるもので、厳しい内容だ。

 機器管理不備明らか

 もんじゅは平成7年のナトリウム漏れ事故の後、22年5月に運転再開したが、同8月のトラブルで停止した。毎年100億から200億円の維持費を要し、この間、高速増殖炉開発の在り方について何度か議論があった。ここ数年、機器の管理の不備が繰り返し明らかになり、規制委から事実上の運転禁止命令を受けていた。

 今回、規制委の田中俊一委員長は、そのもんじゅの運営主体として、原子力機構は不適格とした。文科省は真摯(しんし)に受け止め、国の研究開発機関を管轄する官庁としての責任を明らかにすべきだ。科学の基礎・技術研究といえども、可能な限り無駄を省いて、全体的に資金と人材をより効率的に活用できるような方策を追求する必要がある。

 勧告が行われれば、文科省は新たな運営主体の検討に入らなければならない。しかし、もんじゅ設置の所期の目的を実現できるのは、原子力に関するわが国唯一の総合的研究開発機関である原子力機構をおいてないことは明らかだ。

 同機構では、昨年10月に敦賀事業本部の組織再編が行われ「もんじゅ運営計画・研究開発センター」を新たに設置。民間から児玉敏雄理事長を迎え、研究開発の効率化について抜本的な改革を進めている。

 また政府がフランスの新型高速炉「アストリッド」の開発への協力を決めたことを受け、フランスとの間で設計、安全、燃料分野などでの研究を始めた。国際安全基準の策定など、多国間協力にも積極的に取り組む方針だ。

 高速増殖炉の開発計画が延期を余儀なくされているのは、機器管理の不備ということもあるが、世界に先駆けて新しい技術を開発するための猶予期間であるという事実も忘れてはならない。高速増殖炉は独自の技術体系を持っており、能力は軽水炉より非常に高いものであることも明らかになっている。

 エネルギー資源に乏しい日本にとって、ウランを有効利用する核燃料サイクルの確立は必須である。その実現のために、高速増殖炉の実用化を目指してきた。日本のエネルギー安全保障上も欠かせない政策である。

 再処理や燃料製造などの技術の向上も、高速増殖炉の開発とともに行われるべきものである。もし開発計画を断念するようなことになれば、わが国の原子力政策にとって計り知れない打撃になる。

 原子力行政踏まえよ

 一方、規制委は絶大な権限を持つ行政機関であり、一人ひとりの委員は行政官でもある。行政官として、国の原子力政策の下で原子力施設の運用に関し、法令をいかに適用すべきか慎重に見極めなければならない。原子力行政全般の中で、規制行政のバランス感覚が必要だ。

(11月7日付社説)