北朝鮮がミサイル発射、日米韓は挑発を警戒せよ


 北朝鮮が日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射した。米韓合同軍事演習への牽制(けんせい)とみられ、こうした挑発行為は今後も続く恐れがある。日米韓は連携して警戒すべきだ。

国連安保理決議に違反

 今回の行為は国連安全保障理事会決議などに違反しており、地域の不安定化を招きかねず容認できない。日本政府が厳重に抗議したのは当然だ。

 北朝鮮は毎年のようにこの時期、米韓の演習に対抗する形で挑発を行っている。2010年3月には韓国哨戒艦撃沈事件を起こし、乗組員46人の命を奪った。13年には韓国動乱休戦協定の白紙化を宣言したほか、日本や米国に対する核の先制攻撃にまで言及して緊張を高めた。

 日本は今回のミサイル発射を受け、自衛隊の警戒・監視活動を強化する一方、北朝鮮による日本人拉致問題の解決を重視し対話の姿勢は堅持する方針だ。

 しかし、北朝鮮の拉致被害者再調査は進んでいない。北朝鮮は昨年7月、特別調査委員会を設置し再調査に着手した。当初、初回報告は昨年夏の終わりから秋の初めとすることで合意していたが、先送りされたままになっている。

 再調査開始の際、日本は人的往来と送金に関する制限を解き、人道目的に限定して北朝鮮籍船舶の入港も認めるなど対北独自制裁の一部を解除した。やはり判断に甘さがあったと言わざるを得ない。北朝鮮は日本と米韓両国の分断を狙って、制裁解除の前後にも弾道ミサイルを発射したが、日本は方針を変えなかった。

 拉致被害者家族の高齢化は著しく、政府が早期解決を図るのは理解できる。しかし、北朝鮮に譲歩しても足元を見られるだけだ。拉致、核、ミサイル問題の「包括的解決」が必要との基本的立場に立った外交が求められよう。このまま再調査が進まず、米韓演習への挑発行為が続くようであれば、制裁復活を検討する必要がある。

 北朝鮮に関して、米国では懸念される報告が相次いでいる。ジョンズ・ホプキンス大の米韓研究所は、北朝鮮が20年までに最多で100発の核爆弾を保有する可能性があるとの分析結果を明らかにした。

 研究員によれば、北朝鮮は現在、10~16の核爆弾を保有。このうち4~8はウラン型とみられている。プルトニウム型は、中距離弾道ミサイルへの搭載が可能な程度の小型化に成功しているとされる。

 また、米戦略軍のヘイニー司令官は下院軍事委員会に提出した書面証言で、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発を行っているとした。SLBMは地上発射型のミサイルに比べ探知が困難で、在韓・在日米軍などへの脅威となる。

日韓首脳会談実現を

 北朝鮮に対しては、日米韓を中心に国際社会が圧力を強めていくことが欠かせない。

 日韓両国は現在、歴史認識問題などで関係が冷え込んでいるが、北朝鮮は共通の脅威だ。今年は両国の国交正常化から50年を迎える節目の年でもあり、安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領による首脳会談を早期に実現させたい。

(3月3日付社説)