各党代表質問、成長と格差解消に向け論戦を


 第2次安倍改造内閣が発足して初の国会論戦となる各党代表質問が衆院で行われた。野党側も民主党が新執行部の体制を整え、また第2野党の維新の党が結党するなど新たな動きがあった。安倍晋三首相が「地方創生国会」と位置付ける臨時国会で成長戦略をめぐる論議を深めてほしい。

 海江田氏が労働改革批判

 「地方創生」は超高齢化社会と少子化による人口減少の流れに対処するものだ。地方では過疎化の進行による将来の自治体消滅、国全体では労働人口の減少による経済のマイナス成長が懸念されている。

 そこで、経済政策・アベノミクスの第3の矢となる成長戦略の具体化のため、内閣改造後の今国会では、東京一極集中を是正する地方中核都市の振興、女性の社会進出、賃金体系の見直しなど新しい働き方をめぐる労働改革が焦点になる。

 これに対し民主党の海江田万里代表は、男女共同参画社会を実現する女性の社会進出、クオータ制の導入については「民主党は積極的に考える」と前向きな姿勢を示したものの、アベノミクスが検討する労働者派遣法改正など労働改革は「改悪」と対決姿勢を示した。

 海江田氏が「成長最優先、企業がもうけるのが最優先」などと述べてアベノミクス批判をしたのは、安倍首相が答弁したように「三本の矢の効果による経済の好循環」の兆しがあり、民主党政権では労組票に支えられているにもかかわらず実現できなかった春闘でのベースアップが、アベノミクスの下で果たされたことに焦りもあろう。

 ただ、海江田氏は数値を示して非正規雇用や女性らの不利な労働条件を説いている。アベノミクスの成果を主張する政府・与党に対して「首相は1周遅れのトップランナー」と皮肉を込めたのは欧米先進国の労働条件を念頭に置いたものだ。政府としては長期デフレ不況下で格差が生じている問題を看過することなく、海江田氏の言葉を跳ね返す施策を打ち出してほしい。

 今国会開幕とともに政労使会議が再開されており、国会での与野党論戦と並行して進められる。かつて新自由主義路線に偏った小泉内閣の下で実感の乏しい好況が続き「派遣村」に象徴される格差問題の拡大を招いた教訓もある。成長戦略に労働改革は必要だが、弊害防止に向けて政権担当経験のある与野党で熟議すべきだ。

 また、海江田氏は首相が所信表明で集団的自衛権に触れなかったことに「唖然とした」と批判した。安保問題で売られた論戦は買うべきだろう。

 維新の党の江田憲司共同代表は、集団的自衛権とともに検討すべき課題として集団安全保障の「シーレーン防衛のための機雷掃海」を取り上げ、自民党と公明党の立場を追及した。

 中東情勢に重大な関心を

 中東の油田地帯は「イスラム国」問題で揺れ、国連も動き始めている。不穏な情勢が湾岸など海路に飛び火しないとも限らない。国連中心主義を掲げてこれらの地域の集団安全保障に参加した我が国としても、エネルギー補給の要衝に重大な関心を持って備えるべきだ。

(10月1日付社説)